2013年2月号 [Vol.23 No.11] 通巻第267号 201302_267002

気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)および京都議定書第8回締約国会合(CMP8)報告 政府代表団メンバーからの報告 (2):REDD+の交渉結果

社会環境システム研究センター 持続可能社会システム研究室 特別研究員 森田香菜子

国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)報告 一覧ページへ

1. COP18におけるREDD+に関する議題

「途上国における森林減少・森林劣化の排出削減、森林の炭素蓄積の保全、森林の持続可能な管理、森林の炭素蓄積の強化活動(以下REDD+)」は、2013年以降の気候変動対策に関する制度枠組の重要な柱の一つと考えられており、すでにさまざまな開発途上国でREDD+のパイロットプログラムやプロジェクトが実施されている。しかし、まだREDD+の国際制度は整備されておらず、REDD+の方法論はSBSTAで、制度・政策はAWG-LCAで議論されている。

COP18においては、COP16で採択されたカンクン合意に記されているREDD+に関する検討課題がCOP17で合意に至らなかったため、引き続き議論された。

SBSTAの下で検討されているREDD+の方法論に関しては、REDD+活動の国家森林モニタリングシステムに関する様式、森林関連の排出量に関する測定・報告・検証(MRV)の様式、クレジットの算定の基準となる森林参照排出レベル(REL)/参照レベル(RL)の策定方法や森林REL/RL案の技術評価プロセス、セーフガード(REDD+実施における負の影響軽減)に関する情報提供システムの情報提出時期・頻度等の具体的な情報提供プロセス、森林減少・森林劣化のドライバー(原因)がCOP17後の検討課題となっていた。COP18(SBSTA37会合)では、このなかでもCOP17で議論できなかったREDD+活動の国家森林モニタリングシステムおよびMRVの様式について重点的に検討されることになった。

AWG-LCAの下で議論されているREDD+の制度・政策的側面に関しては、REDD+の結果に基づく活動(十分なMRVを必要とする活動)の完全実施のための資金オプションを引き続き探ることが課題となっていた。COP17の決定に記されている通り、2012年3月には、締約国・オブザーバー機関よりREDD+の結果ベースの活動等の資金供与のための様式と手順に関する意見が集められ、同年7月にはその意見に基づきテクニカルペーパー(FCCC/TP/2012/3)が作成された。同年9月のAWG-LCA15非公式会合では、REDD+の資金オプションに関するワークショップが開かれたり、REDD+の資金オプションに関する論点を (1) 枠組要素、(2) 基本原則、(3) 推進条件、(4) シグナル、(5) 追加的イシュー(制度枠組、非市場手段、今後探求が必要な問題)の五つに分類したインフォーマルノートが作成されたりした。この成果を基にCOP18(AWG-LCA15-2会合)で引き続きREDD+の資金オプションについて議論することになった。

2. COP18におけるREDD+関連の合意事項

SBSTAで検討された国家森林モニタリングシステムおよびMRVに関しては、連日議論が続けられたものの、文書案に合意できず、合意できていない箇所を示すブラケットを多く残したままの文書案(FCCC/SBSTA/2012/L.31)を今後引き続き検討していくことになった。文書案にはSBSTAは国家森林モニタリングシステムおよびMRVの様式に関する方法論のガイダンスについての作業をCOP19で採択することを目指し継続すること、セーフガード情報提供に関する時期・頻度に関して次回のSBSTA38会合で議論を再開すること、森林減少・森林劣化に関するドライバー等に関して継続して検討すること等が記された。

AWG-LCAで検討されたREDD+の結果ベース活動の完全実施のための資金オプションに関しても、これまで提出された締約国やオブザーバー機関の意見等を基に議論された。REDD+の資金に関してはREDD+の方法論に関する議論とは異なり、文書に合意できた。決定文書には、「資金額に応じて、2013年に結果ベースの資金供与に関する作業計画(2回の会期間ワークショップを含む)に取り組むことの決定」、「次回のSBSTA/SBI38において、REDD+実施のための支援の調整や十分で予測可能な支援を目的としたプロセスを合同で開始すること、既存の制度枠組または代替となりうるガバナンスについて検討すること、COP19で提案を行うことの要請」、「締約国やオブザーバー機関がREDD+支援や制度枠組・ガバナンスに関して意見を提出すること(2013年3月25日締切)の招請」、「次回のSBSTA38において、非市場ベースアプローチを検討、非炭素ベネフィットに関する方法論的問題についての作業を開始し、COP19に報告することの要請」等が記された。

AWG-LCAの文書には合意できたものの、REDD+活動や資金を管理するためのREDD+委員会の設立の是非、新しい制度の設立の是非、非炭素ベネフィットの扱い等に関して意見が分かれ、AWG-LCA終了後はSBSTA、SBIでREDD+の資金供与に関して引き続き検討するという大まかな方向性を示しただけで、具体的なREDD+の活動や資金等を管理する場、制度枠組・ガバナンスに関しては決定できなかった。

3. 今後の展望

REDD+のパイロットプログラム・プロジェクトが次々と途上国で始められているにもかかわらず、REDD+の国際制度枠組作りは難航している。REDD+は2013年以降の気候変動の制度枠組の重要な柱として注目され続けてきたが、COP18では、REDD+の方法論の議論も資金の議論も予想以上に進まなかった。これまでSBSTAとAWG-LCAでREDD+の方法論に関する部分と制度・政策に関する部分を分けて議論してきた。しかし、AWG-LCAが終了し、REDD+の資金に関連する問題も今後SBSTAで議論されることになる。今後REDD+の交渉を進めていくには、交渉項目の優先順位付け、論点や交渉上の対立点の整理がますます必要となってくるであろう。

略語一覧

  • 締約国会議(Conference of the Parties: COP)
  • 途上国における森林減少・森林劣化の排出削減、森林の炭素蓄積の保全、森林の持続可能な管理、森林の炭素蓄積の強化活動(Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation, conservation of forest carbon stocks, sustainable management of forests, and enhancement of forest carbon stocks in developing countries: REDD+)
  • 科学上及び技術上の助言に関する補助機関会合(Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice: SBSTA)
  • 測定・報告・検証(Measurement, Reporting and Verification: MRV)
  • 参照排出レベル(Reference Emission Level: REL)
  • 参照レベル(Reference Level: RL)
  • 実施に関する補助機関会合(Subsidiary Body for Implementation: SBI)

目次:2013年2月号 [Vol.23 No.11] 通巻第267号

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