2014年1月号 [Vol.24 No.10] 通巻第278号 201401_278007

日本一寒い町の陸別小学校・陸別中学校の出前授業に参加して

地球環境研究センター アシスタントスタッフ 田上厚子

国立環境研究所陸別成層圏総合観測室のある陸別町の陸別小学校と陸別中学校で、地球環境研究センターの町田室長(大気・海洋モニタリング推進室)が大気中の二酸化炭素濃度の増加や地球上の循環に関する出前授業を行いました。このイベントは陸別町社会連携協議会[注]の活動の一環として実施され、国立環境研究所の他に名古屋大学と北海道大学からも講師が参加し、それぞれの特徴を活かした授業を行いました。

陸別町は「日本一寒い町」として知られていますが(真冬は−30°C以下になることも)、授業を開催した11月15日(金)は、朝の気温が−1°C前後と暖かいほうでした。

陸別周辺は豊かな森林があり、木材加工や新用途の開発、特用林産資源の有効活用はもとより、森林の有する機能に注目し、森林空間と調和した公園・レクリエ-ション施設への有効利用もすすめられているようです。授業を行った陸別小学校、中学校の校舎も陸別産の木材を使い、木のぬくもりが大いに感じられる造りとなっていました。

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地元産木材を使った多目的ホールはぬくもりのある開放的な空間を演出している

今回の出前授業は、陸別小学校の5年生(16人)、陸別中学校の2年生(20人)を対象に行いました。

はじめに、町田室長が、二酸化炭素が観測されるようになった歴史、そして国立環境研究所の地球環境モニタリングステーションのある落石岬と波照間島での観測データのグラフを見せながら、空気中の二酸化炭素が年々増えていること、二酸化炭素の濃度が季節によって変化することなどを説明しました。

空気中の二酸化炭素が夏に減少するのはなぜか、など、時おりクイズ形式で質問をすると、子どもたちは元気よく手をあげて一生懸命に答えていました。

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陸別小学校での出前授業風景 町田室長が出すクイズに元気に答える子どもたち

特に「光合成」を習っていた中学生の子どもたちは、植物の働きが二酸化炭素の増減に深く関わっていることに、納得の表情で大きくうなずいていました。熱心にメモをとる子どもたちの姿も見られました。

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陸別中学校での出前授業風景 二酸化炭素の観測について熱心に話を聞く子どもたち

人間が出した二酸化炭素の一部を陸上植物や海洋が吸収してくれていることなどを学んだ後は、最後に、「海洋が本当に二酸化炭素を吸収できるのか」BTB溶液を使って、実験を行いました。子どもたちに海水の入った小瓶を渡し、そこにBTB溶液を一滴垂らして、二酸化炭素が含まれている自分の息を吹きかけます。すぐにふたを閉めて小瓶を振ると、たちまち液体が青色(アルカリ性)から黄色(酸性)に変わります。その変化をみた子どもたちは、「わぁ!」と歓声をあげながらとても興味深そうに楽しんでいました。

実験を通して二酸化炭素の吸収を自分の目で確かめることができ、地球で起きている現象を身近なものとして感じられたようでした。

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陸別中学校での出前授業風景 BTB溶液を使った実験で、海水が二酸化炭素を吸収するのを実感

授業のまとめでは、二酸化炭素が増えると温暖化すること、そのためにはできるだけエネルギーを使わず、自然を守っていくことが重要であること。また、海洋が酸性化すると貝類が殻を作りにくくなり、二酸化炭素の増加は地球温暖化だけでなく、海洋の酸性化という問題も引き起こすことなどを学びました。

未来を担う子どもたちをはじめ多くの皆さんに、環境を守ることの大切さを少しでも感じてもらえるよう、今後も工夫を重ねながら、継続してこのような機会をもてればと願っています。

最後に、陸別町、そして地元の皆様におかれましては、日頃より私たちの研究に対し、多大なるご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。

脚注

  • 北海道陸別町において観測研究などを実施している、国立環境研究所、名古屋大学、北海道大学、北見工業大学、国立極地研究所と陸別町が参画し、情報交換、事業協力、地域振興を目的とした包括協定が締結されている。

目次:2014年1月号 [Vol.24 No.10] 通巻第278号

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