2014年8月号 [Vol.25 No.5] 通巻第285号 201408_285006

地球環境モニタリングステーション落石岬20周年 3 思い出 3:大自然の厳しい環境のなかで—落石岬ステーションでの管理—

  • 環境省 水・大気環境局大気環境課大気生活環境室 室長補佐 尾高明彦
    2006年4月〜2010年3月まで地球環境研究センター勤務

国立環境研究所では、1994年、北海道根室市落石岬に地球環境モニタリングステーションを設置し、温室効果ガスなどのモニタリングを長期間継続的に実施しています。今年、ステーションの竣工から20年を迎えました。

根室半島の付け根に位置する落石岬は太平洋に突き出た小さな半島で、岬の先端に設置されている地球環境モニタリングステーション落石岬(以下、落石岬ステーション)は、人為汚染の影響が少ない大気を観測しています。

私は、観測施設等の管理を行うため、落石岬ステーションを訪れていました。

落石岬ゲートからステーションまでの通路の途中、落石岬灯台に向かう森林内には散策道(木道)が整備され、アカエゾマツ林内の湿地には自生の南限として天然記念物の「サカイツツジ自生地」があります。サカイツツジの紫紅色の花(6月上旬)とミズバショウの群生や貴重な高山植物が織りなす手つかずの自然、また夕暮れ時にエゾシカの群れが現れ、私たちを見つめていたことなど訪れるたびに新しい発見がありました。

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写真1天然記念物サカイツツジ

落石岬ステーションは、大自然の厳しい環境の中で観測を続けているため施設管理が大変です。凍土や雪解けにより敷地を取り囲む鉄製フェンスの基礎コンクリートが押し上げられて傾いてしまうため、地面との隙間が空き、エゾシカの進入が心配でした。また、観音開きの門扉に鎖を巻いて施錠していましたが、冬は鎖が凍り付いて施錠や開錠が大変でした。これは数年来の懸案事項でしたが、地元の施工業者の知見を踏まえ、フェンスをばらし基礎部分を深く掘り下げ埋設するなどの修繕により解決することができました。

また、観測・分析機器の増加による消費電力への対応や停電を含む緊急時の対応策として太陽光発電システムの設置にもかかわりました。これにより、観測施設における消費電力の1割程度をまかなうことが可能となり、環境負荷の軽減も図ることができました。

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写真2太陽光発電パネル(56枚の太陽電池モジュールが並びます)

根室の夏は短く工事等をする期間が限られ、濃霧、強い風、地吹雪により計画どおりに工事が進まず大変だったことを覚えています。落石岬は厳しい冬の寒さとともに、遅い春から初夏にかけ、大自然の厳しさと生命力のたくましさを垣間見ることができるところでした。

在任期間中、地元の小学生を対象としたエコスクール(ステーション見学)、施設整備等で微力ながらも貢献することができたことを幸いと思います。

目次:2014年8月号 [Vol.25 No.5] 通巻第285号

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