2014年8月号 [Vol.25 No.5] 通巻第285号 201408_285009

【最近の研究成果】 穀物残渣の野焼きによる揮発性有機化合物の排出係数の導出と排出量の推計

  • 地球環境研究センター 地球大気化学研究室長 谷本浩志

2010年春季に中国江蘇省如東において大気汚染物質の集中観測を行ったところ、冬小麦収穫後のバイオマス燃焼の影響が見られた。そこで、排出インベントリに不確実性が非常に大きい非メタン揮発性有機化合物(NMVOCs)について、排出係数(EF)を導出し、排出量を見積もった。一酸化炭素とアセトニトリルが同時に増加する現象がバイオマス燃焼に特有であることを利用して、野焼きの発生源の実態を反映していると考えられる空気塊の特定を行った。そのデータをもとに、NMVOCsのEFを種類別に算出したところ、エチレン・プロピレン・アセトアルデヒド・ホルムアルデヒド・メタノールは、1g/kgを超える大きなEFを持つことが分かった。中国における小麦の野焼きによるNMVOCs排出量は0.34Tgとなり、全穀物に同じEFを仮定した場合は2.33Tg(人間活動による排出の5–10%程度)にもなった。このEFは既存のインベントリの改良に資すると考えられる。

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野焼きの写真(2010年6月、中国江蘇省如東にて)

本研究の論文情報

Emissions of nonmethane volatile organic compounds from open crop residue burning in the Yangtze River Delta region, China
著者: Kudo S., Tanimoto H., Inomata S., Saito S., Pan X. L., Kanaya Y., Taketani F., Wang Z., Chen H., Dong H., Zhang M., Yamaji K.
掲載誌: J. Geophys. Res. Atmos., 119, 7684-7698, doi:10.1002/2013JD021044.

目次:2014年8月号 [Vol.25 No.5] 通巻第285号

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