2014年9月号 [Vol.25 No.6] 通巻第286号 201409_286006

平成26年度エコスクール・地球環境モニタリングステーション落石岬見学会の報告

  • 地球環境研究センター 観測第二係 係員 渡會貴之

北海道根室振興局・根室市の主催によるエコスクールが6月25日(水)に開催されました。地球環境研究センターは根室振興局の要請により、地元貢献の一環として1998年から毎年これに参加しています。おもな対象は落石近傍地区の小学校5〜6年生で、落石小学校、昆布盛小学校および海星小学校のいずれかで開催されています。今回は、根室市海星小学校から6年生10名が参加しました。

スクールの最初のサイトは、落石岬の地球環境モニタリングステーションです。ステーションへは落石岬入り口のゲートから2kmほど歩かなくてはなりません。今年の根室は6月としては暖かく、天気にも恵まれたので、平地では珍しい高山植物などの自然観察を楽しみつつ、生徒たちは元気いっぱいでステーションまで歩きました(写真1)。

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写真1落石ステーションに着いた生徒たち

ステーションでは、町田敏暢大気・海洋モニタリング推進室長から観測機器の説明がありました。生徒たちは、普段は見る機会もない最先端の観測装置や観測結果について熱心に話を聞いていました。次に、壁に張り出されたグラフを用いて落石岬での二酸化炭素(CO2)観測結果の説明がありました(写真2)。町田室長からの「毎年4月から9月までなぜCO2濃度は減っているのか」という質問に、「暖房を使うから冬はCO2が多くなる」と答えた生徒もいれば、「光合成をするから」という声もちらっと聞こえた気がします。答えが植物の光合成によるものということを聞いて、驚いている生徒も納得している生徒もいました。ここではCO2濃度の季節変化だけでなく、CO2濃度が落石岬でも毎年着実に増加していることを学ぶことができました。

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写真2落石岬におけるCO2濃度の変化について説明を受ける様子

次に海水がCO2を吸収する実験を生徒と一緒に実施しました(写真3)。この実験は小ビンに海水を入れ、指示薬のBTB溶液を滴下して弱アルカリ性の海水が青色を示したところで、小ピンに息を吹き込んだ後、蓋をして振ると海水にCO2が溶け込んで酸性になる(海水の色が変わる)ことを確かめる実験です。黄色になった酸性の海水に今度は新鮮な空気を入れて混ぜると、また元の青色に戻るので、何度でも行うことができます。まず、町田室長が実験をしました。生徒たちは興味津々で、色が変わるとワッと歓声が沸きました。次に生徒一人ひとりにビンを渡して自らの手で実験をしてもらいました。色が変わるというわかりやすさから、生徒たちは何度も何度も実験を試みていました。最後に町田室長から「お家に帰ったら家の人にも、見せてあげてください」と宿題がでました。実験の仕組みを理解し、楽しみながら実験ができたので、きっと家族の方にこの興奮を伝えられと思います。

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写真3海水実験をする生徒たち(写真提供:根室振興局)

ステーション見学の後、海星小学校に戻り、今度は自転車発電と、地球儀を使った温暖化についての講義を受けました。

自転車発電では電気を作ることがどれだけ大変なのか身をもって体験ができます(写真4)。生徒たちはへとへとになりながらも、発電量を競いながら楽しく発電をすることができました。体を使って発電を体験することにより、エネルギーのありがたさをあらためて知り、節電への意識を持ってくれたと思います。

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写真4自転車発電で発電量を測定中

環境問題、特に地球温暖化は目に見えない、気づきにくいところで進んでいます。ですが、観測を行うことで、地球温暖化の原因の一つになっているCO2の増加が着実に進んでいることがわかります。

今回行ったCO2濃度のグラフについての説明や海水実験はCO2濃度が年々増加していることや、1年の間では春から夏にかけて光合成により少なくなること、CO2が海水に影響されることが目に見えてわかり、CO2についての関心が高まったと思います。また、観測データが自分たちの住んでいる近くで観測されたものとなると、なお一層興味を持てたと思います。

長期観測は地元の方の協力があってこそ成り立ちます。今後は落石岬周辺の地元の方(子どもたちだけではなく)を対象とした、見学会も開いた方が良いと思いました。

最後に、このような、機会を提供しつづけていただいている北海道根室振興局と根室市、そして地元の方々に心から感謝申し上げます。

これまでのエコスクール(平成21年度以降)に関する記事は以下からご覧いただけます。

目次:2014年9月号 [Vol.25 No.6] 通巻第286号

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