2014年12月号 [Vol.25 No.9] 通巻第289号 201412_289007

【最近の研究成果】 森林の台風被害リスク評価における衛星ライダーの利用

  • 地球環境研究センター 陸域モニタリング推進室 高度技能専門員 林真智

近い将来、気候の温暖化に伴って勢力の強い台風の発生頻度が増えることが予測されている。毎年のように森林における台風被害が発生している我が国では、今後の森林管理のためにも、強風に強い森林・弱い森林の特性を明らかにすることが肝要である。

本研究では、レーザ光を用いた最新の観測器である衛星ライダー(ICESat衛星)の観測データを利用して、2004年台風18号襲来時の北海道苫小牧市周辺の国有林を対象に、台風前後の樹高の変化を推定した(樹高として、レーザ光が照射された直径約50mの範囲の最大樹高が計測される)。その結果、被害が大きかった林分では平均で2.7mの樹高の低下が、中でもカラマツ林では最も顕著な樹高低下(平均6.4m)が観測された。次に、傾斜角、斜面方位、土壌型、立木の粗密度、下層植生など8つの地理条件と樹高低下量との関係を調べたところ、急斜面より緩斜面で、密な林分より疎林で、下層植生が低木やササより草本植生で、それぞれ被害が大きくなる傾向が見られた。

このように、衛星ライダーが風倒害による樹高の低下を定量的に観測できることが示された。しかし、今回の結果は一事例に過ぎないため、より多くの台風を対象とした広域での解析を行い、台風に強い森林の一般的な特性を明らかにしていく必要がある。

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2004年台風18号に伴う樹高低下量と地理条件との関係の解析結果。正の値が大きい地理条件ほど被害が大きく、負の値が大きいほど被害が小さかったことを表す [クリックで拡大]

本研究の論文情報

Quantitative assessment of the impact of typhoon disturbance on a Japanese forest using satellite laser altimetry
著者: Hayashi M., Saigusa N., Oguma H., Yamagata Y., Takao G.
掲載誌: Remote Sensing of Environment 156, 216–225, 2015, DOI: 10.1016/j.rse.2014.09.028.

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