2016年5月号 [Vol.27 No.2] 通巻第305号 201605_305004

高山帯モニタリングに関する相互協力について 長野県と国立環境研究所が基本協定を締結

  • 地球環境研究センター 交流推進係

平成28年2月19日(金)、長野県の阿部守一知事と向井人史国立環境研究所地球環境研究センター長(住明正理事長代理)は、高山帯モニタリングに関する相互協力についての基本協定書にサインし、これを締結しました。協定の正式名称は「生物多様性の推進に関する基本協定」であり、副題として「地球温暖化による脆弱な生態系への影響検知のための高山帯モニタリングに関する相互協力」というタイトルが付いています。両者は、今後、長野県内の高山帯への定点カメラ設置について一層の協力を進めることになりました。

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写真協定書を取り交わした阿部守一長野県知事(右)と向井人史国立環境研究所地球環境研究センター長(左)

長野県は日本アルプスなど日本屈指の豊かな山岳環境を有しています。国立環境研究所の高山帯モニタリングサイトも県内に10か所以上設置されており、今後、地球温暖化の影響を把握するための重要サイトとして、さらに対象地点を拡大していく方針をもっていました。

これまでも国立環境研究所は長野県環境保全研究所等を通じて、高山帯モニタリングの実施で協力関係にありましたが、平成27年10月に小熊宏之環境計測研究センター主任研究員と井桁正昭地球環境研究センター主幹ら関係者が長野県庁にモニタリングの進捗状況をご報告した際、中島恵理副知事はじめ関係者の皆様から強い御関心を頂き、今後の積極的な協力の打診がありました。その後、トントンと話が進み、わずか数か月の間に、研究所と県のトップが協定に合意して協力を強化することになりました。

これを機に、平成28年度に長野県内に新たに8か所の新しいモニタリングサイトが設置される予定です。高山帯モニタリングを実施するには定点カメラを設置する必要がありますが、モニタリングに適した山岳は国立公園内にあることが多く、カメラの設置には自然公園法等の許認可手続きが必要になります。この手続きでは、現地事情に詳しい長野県との協力が設置を円滑に行いたい研究所にとっても非常にプラスになります。また、つくばでは知り得ないモニタリングに適切なカメラ設置場所などは、観測地に精通している長野県担当者の助言が有効です。新しい場所にカメラを設置するとなると非常に厳しい規制への一からの対応が求められますが、既存の山小屋の中などであれば自然改変が少ないため手続き等も少なくて済み、速やかな観測が可能です。このような設置ポイントに関する情報は県の担当者が精通しています。

一方、長野県内の高山帯でカメラ設置とそれによる詳細な観測が実現すれば、地球温暖化の影響把握に加えて、登山者の安全確保、観光資源への市民の関心の向上等、副次的な相乗効果が期待できるため、長野県としても大きなメリットとなります。

長野県と国立環境研究所の双方にメリットを生む高山帯モニタリングですが、さらに今年から8月11日が「山の日」として国民の祝日になります。つまり、国民の山岳への関心がこれまでより高まるので、多くの山岳を県内に有する長野県は山の安全、観光、そして環境保全にこれまで以上に力を入れています。今年8月には「山の日」制定を記念して、上高地で大きなイベントが予定されていますし、10月には大町市でライチョウサミットと称する会合が開催されます。これらのイベントに対して長野県と国立環境研究所が連携してモニタリングの取り組みを紹介しようという企画も進んでおり、ますます高山帯への関心が高まる一年になりそうです。

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