2016年8月号 [Vol.27 No.5] 通巻第308号 201608_308005

【最近の研究成果】 「いぶき」は水蒸気も測っています! —温室効果ガス観測技術衛星による水蒸気の観測と地上観測との比較—

  • 地球環境研究センター 衛星観測研究室 特別研究員 Eric Dupuy
  • 地球環境研究センター 森野勇吉田幸生内野修松永恒雄横田達也ほか

主要な温室効果ガスである二酸化炭素とメタンの全球濃度分布を明らかにするために、2009年に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」が打ち上げられ、現在も観測を継続している。「いぶき」に搭載された温室効果ガス観測センサの短波長赤外領域スペクトルから[1]、二酸化炭素やメタンのカラム平均濃度、更に自然起源の温室効果ガスである水蒸気も同時推定されている。地球大気中の水蒸気の分布や変動を理解することは、地球温暖化研究だけでなく、雲、降水などの気象現象や水循環の研究にも重要である。地上観測や直接測定は高精度な水蒸気データの取得が可能であるが、同じ方法で全球を網羅的に観測することはできないので、衛星観測が非常に重要な観測手段である。様々な手法を用いた数十の衛星による水蒸気観測が行われているが、「いぶき」も7年以上の観測データが蓄積され科学的価値が上がってきた。本研究では、「いぶき」による水蒸気カラム平均濃度を、地上設置フーリエ変換分光計観測網(TCCON[2])によるデータ(TCCONデータ)を用いて比較した。TCCONデータ(解析バージョンGGG2014)は、日本のつくば、佐賀を含む計16地点のデータを用いた。「いぶき」データは、バージョン02.21の陸域観測に対して、二酸化炭素やメタンが一般公開されているのと同等のスクリーニングを施したものを用いた。その結果、「いぶき」データはTCCONデータより103ppm​(3.1%)小さい結果となった(図)。この結果は、類似の衛星観測と同程度の結果で、概ね良い一致を得たと言える。本研究の結果を基に、「いぶき」の水蒸気データも、7月中旬に一般に公開される予定である。

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TCCONデータを用いた「いぶき」水蒸気データの比較。縦軸が「いぶき」データで、バージョン02.21の陸域観測に、一般公開相当のスクリーニングを施したものである。横軸はTCCONデータで、解析バージョンGGG2014である。それぞれのTCCON地点を中心に緯度経度1度以内、「いぶき」の通過時刻の±30分以内の一致したデータを比較に用いた。16地点のTCCON地点は右に記載されており、( )の数字は比較に使用したデータセット数である [クリックで拡大]

本研究の論文情報

Comparison of XH2O Retrieved from GOSAT Short-Wavelength Infrared Spectra with Observations from the TCCON Network
著者: Dupuy E., Morino I., Deutscher N. M., Yoshida Y., Uchino O., Connor B. J., De Mazière M., Griffith D. W. T., Hase F., Heikkinen P., Hillyard P. W., Iraci L. T., Kawakami S., Kivi R., Matsunaga T., Notholt J., Petri C., Podolske J. R., Pollard D. F., Rettinger M., Roehl C. M., Sherlock V., Sussmann R., Toon G. C., Velazco V. A., Warneke T., Wennberg P.O., Wunch D., Yokota T.
掲載誌: Remote Sens. 2016, 8(5), 414; doi:10.3390/rs8050414, 2016.

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