2016年9月号 [Vol.27 No.6] 通巻第309号 201609_309007

【最近の研究成果】 暑い日と強い雨の記録更新に対する人間活動の寄与を推定

  • 地球環境研究センター 気候モデリング・解析研究室 主任研究員 塩竈秀夫

毎年、世界のどこかで観測記録を更新する猛暑、豪雨等の極端な気象現象が発生している。我々は、人間活動の影響による気候変動として、暑い日(年最高日最高気温)と強い雨(年最高日降水量)の記録が更新される確率が変化しているのかどうかを調べた。

1951–2010年の観測された海面水温と海氷、温室効果ガス濃度増加等を大気気候モデルに与え、過去の気候変動の再現実験を100回(100メンバ)計算した。さらに、海面水温から長期温暖化成分を除き、温室効果ガス濃度等の外部強制因子を固定した非温暖化実験も100メンバ実行した[1]

両実験と観測データ[2]において、「世界で観測データが十分にある地域のうち記録が更新されたのは何%か」の時間変化を比較した(図)。解析の始点である1959年においては、全てが新記録になる。その後、データが蓄積されるほど前年までの全データを上回る新記録は発生しにくくなるので、時間の経過とともに面積割合は低下していく。再現実験は、観測された面積割合の時間変化をよく現している。一方、非温暖化実験では、記録更新面積の低下速度が再現実験より速い。1990年代半ば以降は、連続して再現実験と非温暖化実験に統計的有意な差が生じている。これらの結果から、人間活動によって暑い日と強い雨の記録が更新される可能性が上がっていたと評価された。

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暑い日(年最高日最高気温)と強い雨(年最高日降水量)の記録が更新された面積割合(%)の年変化。黒線は観測データ、赤線と青線はそれぞれ再現実験と非温暖化実験(100メンバの平均)。横軸上の十字は、再現実験と非温暖化実験に統計的有意な差がある年を示す

脚注

  1. この実験データは、Database for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF) (http://www.miroc-gcm.jp/~pub/d4PDF/)として公表している。
  2. Donat, M. G., and co-authors, 2013: Updated analyses of temperature and precipitation extreme indices since the beginning of the twentieth century: The HadEX2 dataset. J. Geophys. Res. Atmos., 118, 2098−2118 (http://www.metoffice.gov.uk/hadobs/hadex2/)

本研究の論文情報

Attributing Historical Changes in Probabilities of Record-Breaking Daily Temperature and Precipitation Extreme Events
著者: Shiogama H., Y. Imada, M. Mori, R. Mizuta, D. Stone, K. Yoshida, O. Arakawa, M. Ikeda, C. Takahashi, M. Arai, M. Ishii, M. Watanabe and M. Kimoto
掲載誌: SOLA, 2016, 12, 225−231, doi:10.2151/sola.2016-045.

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