2016年10月号 [Vol.27 No.7] 通巻第310号 201610_310007

【最近の研究成果】 衛星「いぶき」(GOSAT)から得られた温室効果ガス濃度の高精度化に向けたバイアス補正手法の開発

  • 地球環境研究センター 衛星観測研究室(現所属 秋田県立大学生物資源科学部)井上誠
  • 地球環境研究センター 森野勇内野修中津留高広吉田幸生横田達也町田敏暢ほか

国立環境研究所では、2009年に種子島宇宙センターから打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)に搭載されている温室効果ガス観測センサ(TANSO-FTS[1])の短波長赤外域の反射光スペクトルを用いた二酸化炭素とメタンのカラム平均濃度の推定とその検証を行ってきた。その結果、航空機観測データと比べてGOSATの二酸化炭素には1〜2ppm、メタンには1〜7ppb程度の違い(バイアス)があることがわかった[2][3]。本研究ではそれらのバイアス低減を目的とし、重回帰分析(あるデータを他の2つ以上のデータによって説明するための関係式を作る分析法)と地上設置フーリエ変換分光計観測網(TCCON[4])の濃度データを用いることによってGOSATデータのバイアスを補正する手法を確立した。補正前後のGOSATデータと航空機観測データの相関図(図、二酸化炭素の例)を比較すると補正後の回帰直線(青線と赤線)が明らかに黒い実線に近づいていることがわかり、バイアスが低減されることが確かめられた。この成果がGOSAT利用者への有用な情報提供と幅広いデータ利用につながり、国内外での温室効果ガス研究がさらに進展していくことが期待される。

figure

航空機観測により得られた二酸化炭素のカラム平均濃度と (a) 補正前のGOSATデータ、(b) 補正後のGOSATデータとの相関図。緑色、青色の点はそれぞれ陸域、海域のGOSATデータ。赤色、青色の実線はそれぞれ陸域、海域データの回帰直線で、黒い実線は両データが一対一に対応する線 [クリックで拡大]

本研究の論文情報

Bias corrections of GOSAT SWIR XCO2 and XCH4 with TCCON data and their evaluation using aircraft measurement data
著者: Inoue M., Morino I., Uchino O., Nakatsuru T., Yoshida Y., Yokota T., Wunch D., Wennberg P. O., Roehl C. M., Griffith D. W. T., Velazco V. A., Deutscher N. M., Warneke T., Notholt J., Robinson J., Sherlock V., Hase F., Blumenstock T., Rettinger M., Sussmann R., Kyrö E., Kivi R., Shiomi K., Kawakami S., De Mazière M., Arnold S. G., Dietrich G. Feist D. G., Barrow E. A, Barney J., Dubey M., Schneider M., Iraci L. T., Podolske J. R., Hillyard P. W., Machida T., Sawa Y., Tsuboi K., Matsueda H., Sweeney C., Tans P. P., Andrews A. E., Biraud S. C., Fukuyama Y., Pittman J. V., Kort E. A., Tanaka T.
掲載誌: Atmospheric Measurement Techniques (2016) 3491–3512, doi:10.5194/amt-9-3491-2016.

ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。

地球環境研究センター ニュース編集局
www-cger(at)nies(dot)go(dot)jp
FAX: 029-858-2645

個人情報の取り扱いについては 国立環境研究所のプライバシーポリシー に従います。

TOP