2016年11月号 [Vol.27 No.8] 通巻第311号 201611_311004

環境漫画家 高月紘(ハイムーン)氏に聞きました 〜「酒井広平講師による『検定試験問題を解いてみよう』シリーズ —3R・低炭素社会検定より—」祝100問記念!〜

  • 地球環境研究センターニュース編集局

約3年にわたり地球環境研究センターニュースでお届けしてきた「酒井広平講師による『検定試験問題を解いてみよう』シリーズ —3R・低炭素社会検定より—」が、100問を迎えました。100問達成を記念して、「3R・低炭素社会検定」実行委員会代表の高月紘氏に、検定試験について、また、環境漫画家としての活動などを、地球環境研究センターの酒井広平さんがインタビューします。

高月紘氏は廃棄物管理、環境影響評価、環境教育などを専門とし、京都大学教授、石川県立大学教授、廃棄物学会会長などを歴任され、現在は京都大学名誉教授、エコロジーセンター館長、「3R・低炭素社会検定」実行委員会代表として活躍されています。また、High Moon(ハイムーン)のペンネームで、環境漫画家としても活動されています。

今回は、新作漫画も描いていただきました。

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ゴミに関する基礎的な知識をもってほしい

酒井

「3R・低炭素社会検定」は、もともとは「3R検定」として2008年に発足したと聞いています。どういったきっかけで始まったのでしょうか。

高月

京都で環境活動をしている市民グループの人たちにゴミの基礎的な知識をもってほしいと思ったのです。市民グループの活動としてはリサイクルにばかり目がいってしまい、制度や実際のゴミ処理についてあまり知らないというのはいかがなものかということで始めました。最初は「ゴミ検定」という名称にしようかと思いましたが、広く一般の人に受けてもらうには語呂が悪いし、ネーミング的によくないということになり、当時、3R(リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle))という言葉が話題になってきたので、「3R検定」にしました。

酒井

第3回試験を目指した2010年に低炭素社会部門が立ち上げられ、「3R・低炭素社会検定」と名称が変更になりましたね。

高月

2年間は「3R検定」でいったのですが、受験者の数も減り、伸び悩んでいました。そこで、打開策として、ゴミだけではなく、環境全般に関係したこととして、当時キーワードだった低炭素社会とセットにして受験できるような体制にしました。

京都市のゴミの有料化財源の予算を得て

酒井

受験者は環境活動をしている市民グループの方が多いのでしょうか。

高月

廃棄物関係の会社など、受験者の半分以上はいわゆる会社員です。当初、市民グループや地方自治体の方に受けてもらおうと思っていたのですが、受験料がかかるということもあり、そうすんなりとはいかなかったです。幸い、京都市がゴミの有料化を始めまして、その財源で何か目新しいことをする人に予算をつけるということになりました。今も活躍していただいている浅利美鈴さん(京都大学准教授)たちが、ゴミの有料化財源で、「3R検定」をほかの地域にも広げていくようにしました。検定試験の実施については、初めてのことで、どういう制度で進めたらいいかわからなかったので、東京の専門会社に頼みました。受験問題を発送するのにもガードマンがついて、本当の試験のルールでやったものですから、ものすごいお金がかかったのを覚えています。試験についても京都市役所の人に積極的に参画していただき、1000人以上の受験者がいました。

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意欲のある人たちの協力のもとで

酒井

どういうふうにしてかかわっている方々を集めたのでしょうか。

高月

多くは口コミです。この検定には地域パートナーといって、いくつかの地区で協力してもらえるような市民団体や、行政機関の外部団体的組織があります。その人たちにお願いしてチラシを配ってもらったり、自治体を訪問してもらったりして広めています。

酒井

試験問題の執筆者はどういった経緯で集められてきたのですか。

高月

手前味噌になりますが、執筆者は私が所属していた京都大学の研究室の出身者が中心になっています。候補となる人を一本釣りしたこともあります。そういう人たちの協力で運営されていますが、ほとんどボランティアでお願いしているのが非常につらいところです。意義を感じて、やってやろうという人たちの意欲で、検定問題の執筆や試験が行われているのです。大学の関係者だけではなく、酒井さんが所属している国立環境研究所(以下、国環研)のメンバーにも執筆者に入っていただいています。国の機関も加わっている検定ということでPRもできますので、ありがたいと思っています。最近、やっと、検定の実行委員のなかで役割分担ができてきました。

検定合格がスタート

酒井

実際に検定に合格した環境リーダーは、その後どんな活動をしているのでしょうか。

高月

企業から受験した人は、企業のなかの事業展開のなかで3R検定を活かしておられるケースが多く、検定の合格者数をアピールしている企業もあります。行政のなかでは、1年目くらいは、京都市などでは、検定合格者は人事異動のときにそれなりの評点をつけてもらえるというメリットがあったので、職員の方は必死で受けられました。いろいろな活用の仕方があります。検定に合格したというステータスをもっているので、市民団体では、一目置かれる存在になっている方も結構おられます。

酒井

「3R・低炭素社会検定」として、今後目指していきたい方向を教えてください。

高月

市民活動や企業の環境活動において、3Rや低炭素社会に関する基礎をしっかり身につけていただくことが重要なので、“知” が広がるのを重視しながら、ただ知っているということだけで終わるのではなく、それが実際の活動に結びつくような検定にしたいというのが大きな狙いです。そのため、合格者ミーティングやセミナーなどを開催して、フォローアップしています。

酒井

合格して終わりではなく、そこがスタートということですね。

使い捨て容器やゴミ問題から始まった環境漫画

酒井

高月先生は、環境漫画家として活躍されていますが、そのきっかけは何ですか。

高月

子どもの頃から漫画を描くのは好きでした。大学に入学して美術部に入ったら、漫画を描いている先輩が結構おられたんです。美術部で漫画もありなんだと思い、私も描きました。当時のものはまったくナンセンスな漫画でした。あるとき、たまたま、『月刊廃棄物』という雑誌で、さまざまな読者のために、ゴミだけではなく他のことも載せようという企画が始まりました。それなら、せっかく廃棄物関係の雑誌なんだから、若干やわらかい漫画でも載せたらどうかと思い、作品を出したのがきっかけで、1982年から『ゴミック「廃貴物」』の連載が始まりました。

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酒井

そこから環境漫画家になられたのですか。

高月

その少し前の1978年に『空缶』という一コマ漫画集を自費出版しました。京都市で空き缶条例が話題になった時期がありました。市内にはたくさん名所旧跡がありますが、そこにポンポン空き缶を捨てられるのを取り締まるような制度を設けようということになりました。その議論をしているうちに、空き缶を捨てる人はもちろん悪いのですが、使い捨て容器を製造している側にも問題があるのではないかということになりました。それで、いろいろな人に関心をもってもらうため、漫画集『空缶』を作りました。ゴミや使い捨て容器の問題など、環境に関連した一コマ漫画が環境漫画になってきたのです。

酒井

どういうふうに描かれているんですか。

高月

普通にサインペンや筆ペンで描いたものをスキャナーで取り込んで、それに色をつけています。

時事問題から浮かぶアイデア

酒井

ハイムーンのペンネームで、風刺のきいた漫画も多いのですが、ネタはどのように浮かんでくるのですか。

高月

時事問題ですね。何か事件が起こると、環境問題にかけて考えようというのがだいたいのネタです。

酒井

新聞やテレビなどからアイデアを得るのですね。

高月

そうです。何か事件があって、けしからんと思ったときにいいアイデアが出てくるのです。平穏な雰囲気だとあまり出てこない(笑)。アイデアが出て、そのときにぱっと頭に浮かんだものを絵にします。絵はあっという間にできるんですけど、アイデアが出るまでに2〜3日かかります。以前はゴミばっかり扱っていましたが、それでは広がりがないので、最近は地球温暖化を含めて、環境全般をテーマにしています。

酒井

構想ができて絵にするのに、すぐといっても想像がつきません。だいたいどのくらいかかりますか。

高月

1枚作るのに2〜3時間ですかね。一応、私、プロの漫画家ですから。

漫画は国際語

酒井

漫画は言葉の壁がありません。そこが素晴らしいと思います。

高月

漫画というのは国際語です。海外で漫画展を開くときは、キャプションだけ英訳しておけば、たいていどこでも通用します。

酒井

キャプションを英語に翻訳したハイムーンの漫画について、海外の方はどんな反応をなさるのでしょうか。

高月

結構人気あります。ジャパン・フォー・サステナビリティというNPOが彼らのサイトのEco Cartoon of the Monthというコーナーで、毎月一つ私の漫画(英語版)を海外に発信してくれています。そうするといろいろな国から漫画を使わせてほしいという要望があり、活用していただいています。私はJICAの研修生に講義をしたりしますが、みなさんハイムーンを知っているのです。JICAの海外協力隊で日本の人が向こうに行くときに、漫画をもっていくんです。ハイムーンのをもっていくと、海外の人たちに喜ばれるようです。

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体験から自分の問題として捉えてもらう

酒井

環境教育もいろいろされていると思いますが、検定以外でどのようなことをされているのでしょうか。

高月

私が館長をしている京(みやこ)エコロジーセンター(http://www.miyako-eco.jp/)がまさにその機関です。たとえば、見学にくる小学生に、水の大切さを知ってもらうために、実際に水道をひねってどれくらい水が出るかということを体験してもらって、節水などを学ぶプログラムがあります。ほかには、ゴミの分別の仕方や、食べ物を季節ごとに選ぶという地産地消のプログラムなどがあります。現在スタッフは20人くらいいますが、スタッフとボランティアの人が一緒にイベントや学習プログラムを企画・実施したり、子どもたちが参加体験して楽しく環境について学べるような指導をしています。このボランティア活動が京エコロジーセンターの特徴なんです。それが一つの人材育成にもなっています。

酒井

高月先生が教えることもあるんですか。

高月

あります。私の場合は、漫画を通じてのワークショップなんかが多いです。

酒井

この施設には海外の方も見学に来られるのでしょうか。

高月

最近はJICAの研修が多いです。中国や韓国からもたくさん来られて、北京にここと同じような環境学習施設ができました。中国も環境学習や環境教育に目を向け始めたようです。

酒井

一般の方に環境問題について伝えるにあたり、心がけていることはありますか。

高月

環境問題を自分の問題としていかに捉えるかというのが一番重要なポイントなので、それを意識しています。そのために体験してもらうことを重要視しています。グラフなどを見るだけではなかなか自分のことと意識できないので、これがあなたの毎日の生活とつながっているんですよ、ということを京エコロジーセンターに来て、体験学習のなかで理解してもらえるようにしています。

研究成果をさまざまな方法で発信してほしい

酒井

持続可能社会、低炭素社会をこれから築いていくために、国環研に期待されることをぜひお聞かせください。

高月

国環研では立派な研究をされていますので、それはそれで是非継続していただきたいのですが、合わせて研究成果を一般市民、国民にいかに伝えていくかということについてもさらに注力いただけたらありがたいです。ウェブサイトにアクセスしてもらうことも一つの方法でしょうけれども、できるだけさまざまな方法で成果を市民に知らせるような努力を期待したいですし、われわれもそれを是非活用したいと思っています。また、地味だけど重要なデータベースをこれからも作っていただき、国民がそれをうまく活用できるような仕組みを考えていただきたいと思います。

酒井

情報の発信については、国環研内のそれぞれのセンターで個別に行っているものと、国環研として一つのところでやっているものがありますが、よりよい方法というのはあるのでしょうか。

高月

私は両方で発信するほうがいいと思います。おのおのがそれなりのノウハウをもっておられますから。ただし、俯瞰的といいますか、全体を見渡してつなげて、市民にどう伝えていくか、学習してもらえるかというところは、包括的な視点でやっていく方がいいでしょう。それをうまくつなぎ合わせていく作業はなかなか難しいですが、必要になるでしょう。

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*このインタビューは2016年9月2日に行われました。

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