2017年3月号 [Vol.27 No.12] 通巻第315号 201703_315006

平成28年度スーパーコンピュータ利用研究報告会を開催しました

  • 地球環境研究センター 研究支援係

地球環境研究センター(以下、センター)は、12月20日(火)に国立環境研究所(以下、研究所)交流会議室で平成28年度スーパーコンピュータ利用研究報告会(以下、報告会)を開催した。研究所では、将来の気候変動予測や炭素循環モデル等の研究開発や膨大なデータを扱う衛星データ解析、その他の基礎研究などを支援する目的で、スーパーコンピュータ(以下、スパコン)を所内に整備・運用し、所内外の環境研究者に計算資源を提供し、スパコンがなければ実現できないような研究成果を生み出してきた。

研究所では、スパコンの利用・運用方針などを審議する「スーパーコンピュータ研究利用専門委員会」(以下、専門委員会)を設置し、所内外のスパコン利用希望ユーザーから申請された研究課題について、専門委員会の意見を踏まえ、スパコン研究利用の可否を判定している。利用が認められたユーザーには、年に一度の報告会(当報告会)で報告が求められる。

報告は、毎年、所内及び所外利用の課題代表者(またはその代理)によって行われる。今回は、所内9、所外6課題(うち2課題は平成27年度で終了)、合計15の研究課題のうち14課題について、前回の平成27年度の利用研究報告会以降、現在までの研究成果の報告が行われた。最新の研究成果の報告や今後の展望に関する議論が行われ、研究におけるスパコンの重要性が確認された。

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スパコンによる研究成果発表を聞く参加者たち

報告された研究内容は、温暖化予測モデルによる気候感度の時間変化の解析結果、オゾン層変動や広域的な大気汚染のメカニズム理解、雲降水システムの研究、温室効果ガス観測技術衛星GOSATおよびGOSAT-2衛星による二酸化炭素やメタン濃度の測定精度を上げるためのエアロゾルモデルのシミュレーション、福島県相馬市松川浦を対象にした粘土などの懸濁粒子の動態シミュレーション等々多岐にわたる。また、平成27年度で終了した課題の発表も行われ、東京大学・阿部教授の課題では、動態植生モデルを結合することによって、北極の大気と海洋の相互作用を介した北極海上の温暖化増幅のメカニズムについての解析結果が示された。また、研究所の山形主席研究員の課題では、国別の将来人口とGDPシナリオを、都市成長モデルを使って都市別にダウンスケールした結果が示された。研究成果報告後の討論では、専門委員会委員および参加者からの活発な質疑応答があり、さまざまな立場からの貴重な意見により、スパコン利用をさらに発展させ、環境研究を進める機会とすることができた。

当日報告された内容の詳細については、センターのウェブサイト(http://www.cger.nies.go.jp/ja/activities/supporting/supercomputer/index.html)を参照されたい。上記サイトには、過去の報告会における発表内容に関する情報が掲載されている(ただし一部掲載されない情報もある)。

当研究所のスパコンは昨年度(平成27年度)に新しいベクトルマシンが導入され、スペックアップされている。計算速度等のスペックは世界トップレベルではないが、環境研究に適した性能の下でさらなる研究成果の充実が期待される。今後も、手厚いサポートと安心して利用できる研究用スパコンシステムをめざし、ノウハウのより一層の蓄積を進める。

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