2018年4月号 [Vol.29 No.1] 通巻第328号 201804_328009

地球環境研究センターのたゆまざる流れ —地球環境研究センター長を辞するにあたって—

  • 地球環境研究センター長 向井人史

2013年以来5年間、地球環境研究センター長として務めてまいりましたが、この度2018年3月をもちまして退職を迎えることとなります。現在の職を辞するにあたり、これまで当センターの活動に皆様からのご協力ご支援を承りましたことに対して御礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。

地球環境研究センターは、1990年の発足以来、地球環境モニタリング事業やデータベース、地球環境研究の支援といった3つの方向性を基本として、気候変動研究とさらに研究と社会をつなぐ役割の両方を目指しながら、各種の活動を行ってきました。その後、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の活動が加わり、さらに、地球温暖化問題に対応するための重点プログラムとして、地球温暖化研究プログラム(現在は低炭素研究プログラム)が開始され、活動の大きな柱となっています。なお、第4期中長期計画の始まった2016年からは、衛星観測センターが研究事業連携部門の中に位置付けられ、GOSAT事業を推進しています。

地球環境研究センター長としての5年間、個人的には研究の現場を離れざるを得ず、自分がこれまで続けてきた長期的観測や事業を同じように行うことが困難になることもありました。しかし、富士山におけるCO2観測の定常化や船舶会社のご協力により太平洋やアジア航路の観測におけるプラットフォーム確保の目途が立つなどの嬉しい動きもありました。また、今後、温暖化影響のモニタリングが重要になることに先駆けて開始したサンゴ礁や高山帯での生態系モニタリングも軌道に乗りつつあります。一方、長期観測を担う各プラットフォームは老朽化していきますので、波照間(沖縄)と落石岬(北海道)の地上ステーションの整備・改修等も今後計画されています。同時に観測機器も、技術進歩に合わせた置き換えなどを進めています。

しかし、大気中の気体の濃度を観測する上で重要な基準ある標準ガスだけは、絶対に動かせないものとして、ボンベ中の濃度を長期に維持しなければならず、たゆまないチェックなどが必須です。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と書いたのは鴨長明ですが、地球環境研究センターの活動も人や観測機器、プラットフォームなどが変わってゆくのは仕方がないのでしょうが、いつ見てもそこに川が存在するように、長期的に精度管理された貴重なデータを取り続けられることが重要と思っております。目まぐるしく変わる社会の中で、「そのまま」であり続けることはむしろチャレンジングなことだと感じています。

最後になりますが、これまで、地球環境研究センターニュースを愛読していただいた皆様やお世話になった運営委員の方々、ご苦労をおかけした所内の方々、そしてセンターの活動にエールを送っていただいた方々に感謝いたしますとともに、2018年4月に新たな体制になりましても皆様のご指導、ご協力、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

ご意見、ご感想をお待ちしています。メール、またはFAXでお送りください。

地球環境研究センター ニュース編集局
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