2018年7月号 [Vol.29 No.4] 通巻第331号 201807_331008

寺本宗正高度技能専門員が第15回日本菌学会平塚賞(論文賞)を受賞しました

  • 地球環境研究センターニュース編集局
寺本宗正高度技能専門員
受賞論文

Teramoto M, Wu B, Hogetsu T (2016) Pathway and sink activity for translocation of 14C absorbed as amino acids in the Pisolithus extraradical mycelium of ectomycorrhizal Pinus thunbergii seedlings, Mycoscience, 57 (6), 431–439.

選定理由

外生菌根共生は、森林の炭素循環において非常に重要な要素である。外生菌根菌は樹木根に共生(菌根を形成)して、土壌中に根外菌糸体を展開する。それによって菌根菌は土壌中のリン酸や窒素に対する吸収効率を増進し、宿主の成長を顕著に促進する。その一方で、宿主から菌組織には多量の光合成産物(炭素)が転流しているため、外生菌根菌は、森林生態系における植物体から土壌への、炭素の流れの一部を担っていることになる。本論文では、根外菌糸体から吸収されたアミノ酸由来の炭素が、共生系内をどの様に移動(転流)するのか、放射性同位体14Cを用いて視覚的に解析している。その結果として、菌根が根外菌糸体を介して、特異的にアミノ酸由来の炭素を吸い寄せていることを明らかにした。本論文は、森林の炭素循環メカニズムの解明に関し、これまで見出されていなかった、新たな生理学的知見を加えるものであり、将来にわたり国際的に高い評価が期待される。上記の理由から、第15回日本菌学会平塚賞に選定された。

寺本宗正高度技能専門員

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