公開シンポジウム『地球温暖化対策の長期目標を考える—パリ協定の「1.5°C「2°C」目標にどう向き合うか?』

地球温暖化対策の新たな国際的枠組み「パリ協定」が11月4日に発効されました。気温上昇を産業革命前から「2°C」あるいは「1.5°C」に抑えるという長期目標に、世界は、そして日本はこれからどう取り組んでいくのでしょうか。

気候変動のリスク評価や、対策評価、科学技術政策論など、様々な研究分野からの最新の知見を踏まえ、この長期目標との向き合い方について市民の皆さんとともに考えるシンポジウムが、11月21日(月)に東京大学伊藤国際学術センター伊藤謝恩ホールで開かれます。

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同シンポジウムは2012年6月に開始された環境研究総合推進費S-10プロジェクト(気候変動リスク管理戦略の構築に関する総合的研究[ICA-RUS])の活動の一環で開かれ、参画する研究者による成果報告もあります。

どなたでも無料でご参加いただけますので、参加希望の方はシンポジウムウェブサイトからお申し込みください。
ウェブサイト: http://www.pco-prime.com/S-10/

プログラムの詳細は以下の通りです。

14:00–14:10 | 開会挨拶

竹本明生(環境省地球環境局研究調査室 室長)

14:10–15:50 | 講演

「パリ協定の長期目標をどうとらえるか?—ICA-RUSプロジェクトの成果より」

江守正多(国立研究開発法人国立環境研究所)

パリ協定では、世界平均気温の上昇を産業革命前を基準に2°Cより十分低く保つともに1.5°Cに抑える努力を追求する目標が合意されました。2°Cあるいは1.5°Cに気温上昇を抑えることで、どのくらいの影響を抑制できるのでしょうか。そのためには、どのような対策が必要で、それらの対策に副作用は無いのでしょうか。我々の研究プロジェクトの成果に基づき、パリ協定の長期目標の捉え方について論じます。

「今世紀の排出が1000年先の未来を決める—ティッピングとは何か?」

鼎信次郎(東京工業大学)

気温上昇が、ある「しきい値(ティッピングポイント)」を超えると、地球の気候を構成する要素に質的かつ急速な変化(ティッピング)が生じる可能性があります。ティッピングの例としては、数百〜千年スケールでのグリーンランド氷床の大規模融解などがあり、これらティッピングはいずれも地球環境に重大な変化をもたらし得ます。したがって、気候変動への対策を行うための長期目標を定める際には、ティッピングが生じるリスクを考慮する事は重要だと考えられます。講演では「ティッピング」とは何かを説明するとともに、今世紀の気候政策とティッピングの関係について論じます。

「大規模緩和策は何をもたらすか?—ネガティブエミッション/気候工学の波及効果」

森俊介(東京理科大学)

2°Cあるいは1.5°Cといった気候目標の達成には、21世紀前半から大規模な緩和努力が必要であり、今世紀後半には世界の温暖化ガス排出と吸収を、差し引きでほぼ0にするほどの大規模な緩和策の実施が求められています。しかし、様々な形で波及的な悪影響を及ぼし得ることも懸念されています。同時にまた、大規模な緩和策を用いてさえ、気候目標の実現はなお、世界が持続可能な社会を志向するかどうかの基本的な価値観に依存します。講演では、大規模緩和策により生じうる波及効果と気候目標の実現の可能性について、ICA-RUSプロジェクトの研究成果を交えて説明します。

「国際合意と社会的合理性:目標選択における社会の判断」

藤垣裕子(東京大学)

国際合意されたパリ協定に対する日本政府の対応は、市民の意見・判断を反映したものであることが求められますが、一方で、気候問題は市民が各自の意見を持つことが難しい問題でもあることも、これまで多く指摘されてきました。気候問題への市民の理解は、メカニズム理解、影響の理解、公平性の理解と、いくつかの層があることがプロジェクトの成果として出てきました。これらをもとに、目標選択をはじめとした日本政府の対応の検討を市民の判断をふまえて実施していくために、何が必要であるかについて考えます。

16:00–17:00 | パネル討論

司会: 江守正多

パネリスト: 滝順一(日本経済新聞)、講演者

内容: 地球規模の気候リスクへの対処方法や長期の気候目標について、会場との質疑応答も含めて議論します。

日時:
2016年11月21日(月)14:00–17:00(13:30開場)
場所:
東京大学伊藤国際学術センター伊藤謝恩ホール(文京区本郷7-3-1)
参加費:
無料
参加予定人数:
300名
主催:
環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクトS-10
共催:
国立研究開発法人国立環境研究所
お問合せ:
シンポジウム事務局(株式会社プライムインターナショナル内)
TEL:03-6277-0117
FAX:03-6277-0118
E-mail:s10_2016@wwwcgerpco-prime.com