News Archives [20040705]
平成16年度エクスクール・大気環境モニタリングステーション学習会 報告
(北海道・落石岬/2004年6月29日)

落石岬
写真1
地球環境モニタリングステーション−落石周辺のジオラマ
写真4
普段は監視カメラで室内をつくばから見張っています
写真3
ところでみんな”つくば”ってどこか知ってる?どう?さあ??
写真2
和田小学校、幌茂尻小学校5.6年生とともに
 6月の終わりというのに気温が13度程度しかなく、しかも朝から霧がたちこめ小雨が降って寒い。そんな中、小学生たちが元気に現れた。和田小学校の5、6年生はあわせて も5人、幌茂尻小学校は12人で、いずれもかわいい小学校である。先生方2名と根室支庁から4名、根室市3名、NHKの方1名をあわせて27人が落石のモニタリングステーション の見学に訪れた。毎年この時期、根室支庁がエコスクールと称して環境月間に合わせて、落石周辺の小学生の環境教育を地球環境研究センターと共同で行っている。
 今年は、温暖化の説明をわかりやすくするためにスタッフの手作りで落石岬の簡単なジオラマを作成した。特徴として温暖化の説明用に赤いレーザーポインターがセット できるようになっている。まず、二酸化炭素といっても、小学生には良くわからないので、息の中にある二酸化炭素を見るためにBTB溶液の入った水をストローでぶくぶく 吹いてもらった。何が起こるか興味津々で見つめるなか、青い溶液が黄色に変わると、「あれ?なんだか色変わってない?」と、さすが小学生は反応が早い。
 地球がもともと暖かいのは太陽が熱を送るためであるが、そのときの大気中の二酸化炭素の重要性をレーザーの赤い光を赤外光線に見立ててジオラマで説明した。 ジオラマの地下にセットされたレーザーポインターは、赤外線が上向きに宇宙に飛んでいくことがわかるようになっている。二酸化炭素の代わりにうすく白い絵の具をまぜ て作った水をガラス瓶にいれて、下からレーザーをあてると小さな粒子がレーザー光線を散乱し赤くその光のみちが目で見えるようになっている。(二酸化炭素が赤外線を 吸収していることを表す。)さらに絵の具を濃くしたものが、二酸化炭素が増えた状態を表していて、この場合水全体が赤く散乱しジオラマを赤く照らしだす。このとき熱 は直接宇宙空間に抜けず、地表面の温度をあげることになる。(この説明は熱エネルギーの動きの全体を示しておらず少しいい加減ではあるが、見ている分には非常にわか りやすいとのことだった。ただNHKの撮影はむずかしかったらしい!)
 落石で観測された二酸化炭素濃度はここ10年で20ppm増加した。このまま増えていくと、100年後には600-1000ppmぐらいになる。そのときの地球はどんどんあったかくなり、 ある予測では5度ぐらい平均気温が上がる可能性もある。先生の質問として、根室の気温が5度ぐらい上がってもらうと住みやすいがという質問があった。そういうよく似た ことは地域ごとにある。しかし問題は、この温度変化が地球全域でさまざまな気象や気候ひいては自然の大きな変化を伴うことである。しかも、それらがすべて予測できる わけではない。もし子供たちに残された未来の環境が非常に悪い環境であったとするならば、我々大人の責任は免れない。
 観測機器の説明をした後、ステーションの屋外用CCD監視カメラを自分で操作してもらった。子供達は俊敏に動くカメラに驚きながら、外にでて説明を聞いている友達や 周りの風景を見たりした。普段は屋外のカメラから落石灯台が見えるがこの日は霧雨のため横の鉄塔も霞んでいる。
 外にある施設として、鉄塔や酸性雨採取器をみてもらった。鉄塔の高さについて、ためしに質問してみたところ、200mという子どもがいた。たしかにそう見えるかもしれ ない。おじさんたちも、そういうころがあったなあ。なんでも外のものが大きく見えたころ・・・。“鉄塔に昇りたいって?“。実はこの鉄塔は垂直のはしごを10mずつ五 回昇らないと天辺に行けない。でも下から10m昇るだけでもかなりゆれている。おみやげとして、地球温暖化のぱらぱらマンガや環境関心度クイズなどを渡した。ぱらぱら マンガを拡大して作った大ぱらぱらマンガを使って作り方を説明したが、ちょっと大きすぎてうまくぱらぱらできない。
 全員で記念撮影した後、すこし霧が晴れて明るくなった落石をまた歩いてゲートへと帰っていく小学生を見送ってエコスクールは終了。目に見えにくい温暖化という現象 を、このエコスクールを通して身近に感じてもらって、エネルギーの無駄遣いを減らしていく輪が北海道の東端から広がっていくことを願いたい。
向井 人史