UNFCCCにおける吸収源に関する検討経緯 ここでは、これまでの気候変動枠組条約に関連する国際的な検討について、吸収源に関する事項を中心に整理しています。
地球温暖化防止に関する関心が高まり、各国が協力して取組を進めることとなり、気候変動枠組条約(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)が検討され、1992年に採択されました。 気候変動枠組条約では、その究極的な目的を、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」としています。また、「そのような水準は、生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に達成されるべき」としています(条約第2条)。 森林に関連する用語として、「吸収源(sink)」及び「貯蔵庫(reservoir)」があります。気候変動枠組条約では、「吸収源」を「温室効果ガス、エアロゾル、または温室効果ガスの前駆物質を大気中から除去する作用、活動または仕組み」と定義し、「貯蔵庫」を「温室効果ガスまたはその前駆物質を貯蔵する気候系の構成要素」と定義しています(条約第1条)。 また、条約の締約国は、温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫(特に、バイオマス、森林、海その他陸上、沿岸及び海洋の生態系)の持続可能な管理を促進すること、並びにこのような吸収源及び貯蔵庫の保全(適当な場合には強化)を促進し並びにこれらについて協力することが責務とされています(条約第4条)。 (▲このページのTOPへ戻る) 気候変動枠組条約発効の要件である50ヶ国目の批准があり、同条約が発効しました。なお、2004年5月24日現在、条約締約国は189ヶ国です。 (▲このページのTOPへ戻る) 改訂版1996年IPCC温室効果ガス国家目録ガイドライン 気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)は、温室効果ガスの排出及び吸収の目録作成に用いる方法を示したガイドラインを作成し、1994年に承認され、1995年に発行されました。その後、同ガイドラインに改訂が加えられ、改訂版1996年IPCC温室効果ガス国家目録ガイドラインが発行されました。なお、1997年に京都で開催されたCOP3において、改訂版1996年IPCC温室効果ガス目録ガイドラインは、第一約束期間における法的拘束力のある目標の算定における温室効果ガス排出量・吸収量の推計方法として用いられるべきであることが再確認されています。 改訂版1996年IPCC温室効果ガス目録ガイドラインは、3部から構成されています(下表参照)。吸収源については、6つの主な排出源/吸収源カテゴリの1つである「土地利用変化及び森林」において、排出量及び吸収量の算定方法が示されています(第2部)。 表 改訂版1996年IPCC温室効果ガス目録ガイドラインの構成
(▲このページのTOPへ戻る) 気候変動枠組条約では、温室効果ガスの削減に関する義務的な目標が示されてはおらず、また、2000年以降の取組が定められていなかったため、COP1以降、これらに関する検討が進められ、1997年、京都で開催されたCOP3において京都議定書が採択されました。 京都議定書は、先進国に対して第一約束期間(2008~2012年)における温室効果ガス削減の数値目標を定め、先進国全体で温室効果ガスを約5%削減しようとするものです(議定書3条)。先進国の数値目標には、法的拘束力があります。京都議定書の批准国は、気候変動枠組条約に基づく目録に、この数値目標達成に関する補足的な情報を含めることとされています(議定書7条)。 京都議定書は、55ヶ国の条約締約国が議定書を批准し、かつ、批准した先進国の合計のCO2(1990年)が全先進国排出量の55%以上となった時点の90日後に発効されます。1990年の排出量が最大(36.1%)である米国は京都議定書からの離脱を表明しているため、京都議定書が発効するためには、1990年の排出量が17.4%であるロシアの批准が焦点となっていました。2004年11月18日にロシアが京都議定書を批准し、発効要件が満たされたため、2005年2月16日に京都議定書が発効しました。2005年5月27日現在、批准国は150ヶ国であり、批准先進国の1990年排出量は全先進国排出量の61.6%となっています。 京都議定書では、各国が数値目標を達成するための補足的な仕組みとして、「共同実施(JI:Joint Implementation)」、「クリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism)」、「排出量取引(Emission Trading)」が導入されました。 吸収源については、温室効果ガス削減目標に、1990年以降の新規植林(A:Afforestation)、再植林(R:Reforestation)、森林減少(D:Deforestation)による排出量・吸収量が算入されることが示されました(議定書3条3項)。また、農業土壌や土地利用変化、林業における温室効果ガスの排出・吸収に関係する追加的な人為活動については、1990年以降に実施されたものであれば、それらの排出量・吸収量を第一約束期間の温室効果ガス削減目標に算入できることが示されました(議定書3条4項)。 (▲このページのTOPへ戻る) 2000年 土地利用、土地利用変化、林業に関する特別報告書 特別報告書は、地球規模の炭素循環とARD及び追加的人為活動に関する科学的及び技術的情報を京都議定書締約国に提供することを目的としています。さらに、議定書締約国による、定義や算定ルールに関する検討に資するものとなっています。 (▲このページのTOPへ戻る) 2001年 COP7においてマラケシュ合意 吸収源については、COP/MOP(京都議定書の締約国の会合となる締約国会議)第一回会合の決定草案(-/CMP.1)を示され、同草案を採択するよう推奨されました。 同草案においては、京都議定書3条3項及び3条4項の下での「森林」の定義や、京都議定書3条3項のARDについて定義が示されました。 京都議定書3条3項及び3条4項の下での「森林」の定義
ARDの定義
図:「京都議定書における吸収源プロジェクトに関する国際的動向」(環境庁国立環境研究所,2000)より引用
また、京都議定書3条4項の追加的人為活動については、第一約束期間において、「植生回復(RV:Revegetation)」、「森林管理(FM:Forest management)」、「農地管理(CM:Cropland management)」、「牧草地管理(GM:Grazing land management)」の4つの活動のいずれか、または全ての吸収量・排出量を算定に入れることができることとされました。
FMの定義
さらに、FMによる吸収量ついては、ARDにより正味の排出が生じる場合は、9MtC/yrを上限として相殺に用いることが可能であるとされました。そして、この相殺分及び、FMのJIプロジェクトによる分を除いたFMによる吸収量については、各国の温室効果ガス排出削減割当量へ加算できる上限が示されました。各国の上限は、下表に示すとおりです。 表 各国の上限値国名
(▲このページのTOPへ戻る) 2003年 第21回IPCC全体会合においてLULUCF-GPG採択 IPCCにより、LULUCF分野における良好手法指針であるGPG-LULUCFが作成され、第21回IPCC全体会合において採択されました。COP9では、GPG-LULUCFが「歓迎(welcome)」され、条約の附属書I国は、2005年以降の条約目録報告において、GPG-LULUCFを使うべきとされました。しかし、京都議定書報告に関する部分については、2004年12月に開催されるCOP10において、更なる検討と決定がなされるまでは除外されることとなりました。 GPG-LULUCFについては、「GPG最新情報」において、その内容を紹介します。 また、COP9においては、吸収源CDMの定義やルール、手続きが合意されました。「吸収源CDMの基礎知識」において、その内容を紹介します。 (▲このページのTOPへ戻る) 2004年 COP10において京都議定書報告におけるGPG-LULUCFの適用が決定 COP10では、COP/MOP1決定案(京都議定書3条3項及び4項下のLULUCF活動のためのグッドプラクティスガイダンス)が作成されました。同決定案では、第一約束期間の京都議定書報告においてマラケシュ合意等と整合性を保ちつつGPG-LULUCFの4章を適用することが規定されました。また、吸収源CDMについては、小規模A/R CDMに関する最終的な詰めが行われ、合意に至りました。 【資料】 |
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