COP9で決定したルール
(▲このページのTOPへ戻る) 京都議定書の第1約束期間中は、以下の2種類の活動が吸収源CDMとして認めらました。
また、いわゆる森林管理による吸収量の増加分は、第1約束期間中においては吸収源CDMとして認められないことが決まりました。 これらの要件を満たした吸収源CDMプロジェクトを実施する際に、事業者はプロジェクト設計書(Project Design Document:PDD)を作成する必要があります。ここではCOP9において決定されたルールに基づき、事業者が検討する必要がある項目を説明します。 (▲このページのTOPへ戻る) ベースラインとは、吸収源CDMプロジェクトが実施されなかった場合に、起こったであろう炭素蓄積の変化を表すシナリオと定義されています。ベースラインは、後にプロジェクトによる実際の吸収量を確定する際に重要な比較点ですので、その設定は理論性と透明性が必要とされています。 例えば、現在放棄された草地があるとします。事業者がこの場所でプロジェクトを行う場合に、ベースラインを設定しますが、吸収源CDMプロジェクトが行われていなければ、この土地は自然に回復し、「森林になっていたのか?」「低木林になっていたのか?」「草地のままだったのか?」など、オプションはいろいろあります。これらのオプションの中から、もっとも論理性・透明性があり妥当と考えられるシナリオをベースラインとして選択する必要があります。 (a) ベースライン純吸収量 ベースラインにおける吸収量は、「ベースライン純吸収量」と呼ばれ具体的な設定は、下記の項目を考慮して設定します。
(b) ベースラインアプローチ 事業者は、ベースライン方法論を選択する際に、プロジェクト活動に最も適していると考えられるアプローチを次の3つから選択する必要があります。
(c) ベースライン方法論 ベースラインの設定(モニタリング計画も同様)は、ある一定の条件下(プロジェクトタイプ、生態系、樹種など)で、ベースラインの設定方法を説明した「方法論」に基づいて行うこととなっています。この方法論は、事業者(またはコンサルタント等)により作成されたものをARワーキンググループ(新規植林・再植林ワーキンググループ、CDM理事会の下部組織)と一部のメソドロジーパネルのメンバーが評価します。ARワーキンググループは、CDM理事会に対して提案された方法論を承認すべきか否かを提案します。その後CDM理事会が最終的な評価を行い、妥当と判断した場合に承認済み方法論として登録されます。 事業者はこの承認済み方法論を使用してベースラインを設定することになります。また、承認済み方法論が存在しない場合は、新しい方法論をPDDと共にCDM理事会に提出し、承認してもらう必要があります。詳細は、以下のウェブサイトで入手可能です。
(▲このページのTOPへ戻る) 追加性は、CDMプロジェクトの重要な概念の1つで、吸収源CDMプロジェクトが実施されなかった場合に、起こったであろう吸収量より、プロジェクトによる吸収量が増加した場合に追加的とみなされます。即ち、吸収源CDMプロジェクトによる純吸収量がベースライン純吸収量を上回る場合において追加的となります。図で示すと以下のようになります。
一見単純な概念のように思われますが、登録されたCDMプロジェクトがなければ、当該プロジェクトが行われなかったという証明は、ベースラインの証明と同様に、論理的で透明性がある方法が要求されています。これは、CDMの有無に関わらず行われていたプロジェクト(Business as Usual(BAU)プロジェクトと呼ばれる)にクレジットを発行することを避ける目的があるためと考えられます。 追加性の議論が進んでいる排出源CDMにおいては、CDM理事会から追加性証明のツールが示されています。このツールは、吸収源CDMにおいても検討されており、今後パブリックコメントなどを経て正式に決定される予定です。排出源CDMにおける追加性証明ツールの概要は以下のとおりです。
(▲このページのTOPへ戻る) 実際の事業が開始すると、事業者はプロジェクトによる吸収量を推定するためにモニタリングをする必要があります。このモニタリングは、計画としてPDDに含める必要があり、ベースラインと並び重要な項目の1つとなっています。 モニタリング計画に含めるべき具体的な内容には、以下の項目が含まれます。
(▲このページのTOPへ戻る) リーケージは、吸収源CDMのプロジェクトバウンダリー外の、プロジェクトに起因する排出の増加と定義されており、最終的なプロジェクトによる吸収量を推定する上で必要になる項目です。リーケージの例としては、ある場所においてプロジェクトを行った結果、その土地を利用していた住民が他の場所で伐採などをして、プロジェクトバウンダリー外で温室効果ガスの排出が起こる場合などが考えられます。 また、吸収源CDMプロジェクトの設計は、リーケージを最小限に抑えるようにすることが求められています。 (▲このページのTOPへ戻る) プロジェクトによる実際の吸収量は、純人為的吸収量と呼ばれ、実際の純吸収から、純人為的吸収量、ベースライン純吸収量、リーケージを差し引くことで求められます(下図参照)。 (▲このページのTOPへ戻る) (a) クレジット発生期間 クレジットが発行される期間は以下のいずれかを選択することができます。
(b) 短期CER(Temporary CER:tCER)と長期CER(Long-term CER:lCER) 吸収源CDMで議論となっていた、非永続性(一旦森林に固定された炭素が火災、伐採などで再び大気中へ放出され、固定が永続的でないこと)は、tCERとlCERの2種類のクレジットによって対応することが決まりました。 それぞれの特徴は、以下の通りです。
(林野庁資料より作成) ※1 AAU:Assigned Amount Unit ※2 ERU:Emission Reduction Unit ※3 RMU:Removal Unit ※4 更新可能なクレジット発生期間の場合は、最終クレジット発生期間終了時。 図 tCERのクレジット発行、失効、再発行 図 lCERのクレジット発行、失効、再発行 (▲このページのTOPへ戻る) 上記(A)から(F)で扱った項目は、PDDにまとめられ、第三者機関によって有効化審査(Validation)を受けます。この審査は、CDM理事会に認定された指定運営機関(Designated Operational Entity:DOE)と呼ばれる機関が行います。DOEは、事業者が提出したPDDに基づき、吸収源CDMプロジェクトの有効性について評価を行います。 審査を無事終了したプロジェクトは、その後CDM理事会において問題がないと判断されれば、CDMプロジェクトとして正式に登録されます。審査対象となる項目は以下の通りです。
CDM理事会に正式に登録された吸収源CDMプロジェクトは、その後モニタリング計画に沿った吸収量のモニタリングを行うことになります。そして、モニタリング結果からプロジェクトの純人為的吸収量を算定し、検証(Verification)を行い、吸収量の確定を行います。 (▲このページのTOPへ戻る) (a) 検証(Verification) 検証は、吸収源CDMプロジェクトによる吸収量の定期的な審査と事後の確定であると定義されています。即ち、プロジェクトが有効化審査で認められた吸収源CDMのルールに則っているか、モニタリングがきちんと行われているかなどを確認すると同時に、PDDに記述された方法によって求めた、実際の純人為的吸収量を確定する行為であると言えます。 (b) 認証(Certification) 認証は、吸収源CDMプロジェクトを検証した内容を文書で証明したものです。 (▲このページのTOPへ戻る) (a) 環境及び社会経済影響 事業者は、環境及び社会経済影響の分析を行う必要があります。具体的には、以下のような項目が挙げられています。
(b) 小規模吸収源CDM 年間吸収量が8,000 tCO2までの小規模植林を対象とし、これを超えて吸収した分についてはカウントできないことが決定しました。なお、小規模吸収源CDMのルールは、COP10(2004年12月アルゼンチン)で決定しました。 (c) 吸収源CDMワーキンググループ 第14回CDM理事会で、吸収源CDMワーキンググループの正式な設置が合意されました。ワーキンググループは、2005年6月までに4回開催されており、その間5つの提案された新方法論(ARNM0001~0005)が審査されました。提案された方法論は、今までのところ全て不合格の”c”判定となってしまいました。また、ARNM0001とARNM0002は、その後のCDM理事会においても”c”判定となりました。 吸収源CDMワーキンググループは、今後吸収源CDMのPDDフォーマットの作成、今後提案される新方法論の評価、新方法論を承認済み方法論へ修正する作業、追加性証明ツールの開発、小規模吸収源CDMの簡素化方法論の開発などを行う予定です。 (▲このページのTOPへ戻る) |
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