GPG-LULUCFにおける吸収量算定方式

 

京都議定書(3条3項、3条4項、6条、12条)に関する補助的情報

 推定と報告のステップ
 京都議定書(12条)に関する推定と報告のステップ
 主なポイント(全般的事項)
 主なポイント(吸収源プロジェクト)


推定と報告のステップ

(1-1) 「森林」の定義の決定

 森林の定義(最小土地面積、最小樹冠率、最小樹高)及び最小幅を決定します。

 各国は、2006年末までに、自国の森林を定義するパラメータを、以下に示す範囲から選ばなくてはなりません。

  • 最小面積:0.05~1ha
  • 成熟時の最低樹高:2~5m
  • 成熟時の最小樹冠率:10~30%

 そして、それらの基準を満たす土地は、森林とみなされます。また、これらのパラメータの数値は、約束期間中、変更することはできません。

(1-2) 定義の各国の状況への適用

 選択する京都議定書3条4項の活動(FM、RV、GM、CM)を決定します。また、選択した活動の解釈を決定します。(森林管理FMの解釈参照)

(1-3) 3条4項活動の優先順位・階層構造の決定

 選択した活動間の優先順位、階層を決定します。

(2-1) 1990年の土地利用・土地被覆情報の編纂

 選択した森林の定義を用いて、1990年における森林/非森林地域を区別する手法を開発します。1990年以降の森林関連の土地利用変化に関する活動を把握する際には、この情報を参照することになります。

(2-2) 地理的境界を報告する土地の地域に国を層化

 各活動の報告には、以下の2つのような手法が示されています。(土地の分類と報告の方法参照)

  • 報告手法1:複数の3条3項や4項の土地を含む地理的境界を用いた報告方法
  • 報告手法2:3条3項や4項の土地を完全に特定する報告方法

 報告手法1を用いる場合は、土地の報告に用いる地理的境界を決定する必要があるため、本ステップを実施します。報告手法2を用いる場合は、本ステップは省略されます。

(2-3) 3条3項活動が生じた土地の特定と面積

 1990年から報告年までに、ARD活動が生じた土地を特定し、その面積及び前年からの異動面積を算定します。

(2-4) 3条4項活動が生じた土地の特定と面積

 3条4項活動が生じた土地を特定し、その面積及び前年からの異動面積を算定します。

(2-5) JIプロジェクトが生じた土地の特定

 吸収源JIプロジェクトが生じた土地を特定します。

(3-1) 第1約束期間の各年の炭素蓄積変化と非CO2温室効果ガス排出量の推定

 ARD活動及び選択した3条4項活動が生じた土地について、第1約束期間の各年の炭素蓄積変化と非CO2温室効果ガス排出量を推定します。ただし、毎年、データ測定を実施する必要はありません。

(3-2) JIプロジェクトにおける炭素蓄積変化と非CO2GHG排出量の推定

 吸収源JIプロジェクトが生じた土地について、第1約束期間の各年の炭素蓄積変化と非CO2温室効果ガス排出量を推定します。ただし、毎年、データ測定を実施する必要はありません。

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京都議定書(12条)に関する推定と報告のステップ

(1) 地域の特定

 吸収源CDMプロジェクトが生じた土地を特定します。

(2) 炭素蓄積変化と非CO2温室効果ガス排出量の推定

 吸収源CDMプロジェクトが生じた土地について、炭素蓄積変化と非CO2温室効果ガス排出量を推定します。

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主なポイント(全般的事項)

(1) 森林管理FMの解釈

 森林管理FMについては、2つの解釈が提示されています。

  • 特定の森林管理施業。1990年以降に着手された、森林火災の消火や、収穫、間伐など。
  • 森林管理施業システム下にある土地の広い分類。特定の森林管理施業が各土地で行われていることは要求されない。

(2) 土地の分類と報告の方法

 3条3項及び選択した3条4項の対象地を分類するため、下図のようなディシジョンツリーを用いることがグッドプラクティスとされています。

(GPG-LULUCFより引用)

 マラケシュ合意では、3条3項及び4項の活動の対象となる土地は、識別可能(identifiable)であり、適切に報告され、将来、追跡されなければならないと書かれています。GPG-LULUCFでは、この要求事項に対して、以下の2つの報告手法を示しています。下図は、これらの報告手法を図で説明したものです。

  • 報告手法1:法的、行政的あるいは生態系の境界を用いて、複数の3条3項・4項活動の対象となる土地単位を含む、境界線を引いた地域を使って報告する方法。
  • 報告手法2:3条3項・4項の各活動の対象となる土地単位が、空間的に明確に、地理的に完全に同定して報告する方法。

(GPG-LULUCFより引用)

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主なポイント(吸収源プロジェクト)

※GPG-LULUCFの執筆段階では、吸収源CDMに関する正式なルールがまだ決定していなかったため、以下のGPG-LULUCFの内容は、最終的なルールと異なる場合があります。以下は、参考扱いとしてください。

(1) プロジェクトバウンダリー

 GPG-LULUCFの執筆時には、JIのプロジェクトバウンダリーについてはマラケシュ合意に記載がありましたが、CDMのプロジェクトバウンダリーについては、SBSTAで検討されているところでした。そのため、GPG-LULUCFでは、LULUCFプロジェクトに関連する活動と実践から生じる、全ての人為起源の排出及び吸収を特定することがグッドプラクティスとされています。プロジェクトバウンダリーとしては、地理的範囲、時間的制限、プロジェクト活動と実践、の3つの観点が考えられうるとされています。

 地理的範囲については、プロジェクト対象地の空間的境界を特定して明確に定義することとされており、プロジェクト地名や対象地の地図、地理座標、土地面積、所有者、土地利用と土地管理の歴史等の情報を示すこととされています。

 時間的制限については、プロジェクトの開始日と終了日により定義することとされています。

 プロジェクト活動と実践については、プロジェクトの初期段階の、及び運営管理に関連する付随的な実践から生じる、温室効果ガス排出・吸収を一覧で示すとともに、プロジェクトに関連する温室効果ガスの排出・吸収を評価し、報告することとされています。

(2) 炭素蓄積変化と非CO2温室効果ガス排出の測定とモニタリング、推定

 炭素蓄積変化と非CO2温室効果ガス排出の測定とモニタリング、推定に関する計画作成と実施のために、以下のステップが推奨されています。

  • ベースラインの開発
  • プロジェクト地域の層化
  • 関連する炭素プールと非CO2温室効果ガスの特定
  • サンプリング体制の計画
  • 炭素プールと非CO2温室効果ガスのモニタリングのための手法の特定
  • QA/QCを含むモニタリング計画の開発

(a) ベースライン(ステップの1)

 CDMのベースラインについては、GPG-LULUCF執筆段階では、SBSTAで検討中でした。GPG-LULUCFでは、ベースラインに関連して考慮すべきこととして、主に以下の2点を挙げています。

  • プロジェクト活動の開始前に関連する炭素プールと非CO2温室効果ガス排出を推定する必要がある。推定にあたっては、可能であればプロジェクト実施サイトでの測定を基礎とすべきであるが、代替の方法やシミュレーションモデルを用いる方法こともありうる。
  • プロジェクト活動がない場合の変化を推定するため、プロジェクト地域で、関連する炭素プールにおける炭素蓄積と非CO2温室効果ガス排出の予測を行う必要がある。予測にあたっては、査読を行ったシミュレーションモデルまたは、炭素プールと非CO2温室効果ガスが測定・モニタリングされている対照地域のデータ、もしくはそれらの両方を用いる。

(b) プロジェクト対象地域の層化(ステップの2)

 プロジェクト開始時に、プロジェクト地域の重要な生物物理的・社会経済的特徴に関する基本的な背景情報及びデータを収集すること、プロジェクトに提案されている土地が地理的に参照できること、プロジェクト地域を比較的均一な単位を形成する亜母集団または層に層化することがグッドプラクティスとされています。

(c) 炭素プールと非CO2温室効果ガスの選択(ステップの3)

 LULUCFプロジェクトのタイプ別に、測定・モニタリングの対象となりうる炭素プールを示したディシジョン・マトリクスが提示されています。

(GPG-LULUCFより引用)

(d) サンプリング計画(ステップの4)

 GPG-LULUCFでは、サンプル・プロットの数とタイプ、形状、サイズについて説明しています。各層での測定・モニタリングのためのサンプルのサイズは、各層の炭素蓄積について推定される分散と、全プロジェクト地域面積に占める当該層の面積割合に基づいて定めることがグッドプラクティスとされています。

(e) 炭素蓄積推定のための現地調査とデータ解析(ステップの5)

 植生と土壌の現地調査には標準的な技術を用いることとされています。また、現地調査が必要な場合は、正式な品質管理計画を含めるべきとされています。GPG-LULUCFでは、地上部バイオマス、地下部バイオマス、枯死有機物(リター、枯死木)、土壌有機炭素の各々について、推定方法を示しています。

(f) 非CO2温室効果ガス排出・吸収変化量の推定(ステップの5)

 GPG-LULUCFでは、バイオマス燃焼、合成・有機肥料施肥、窒素固定樹木・作物・飼料の栽培、土壌re-flooding、土壌排水、土壌撹乱、放牧地管理の変化、の実践について、非CO2温室効果ガスへの影響と排出・吸収プロセスについて整理し、各実践についてIPCCのデフォルト手法とデータの所在を示しています。

(g) プロジェクト運用実践による温室効果ガス排出・吸収変化のモニタリング(ステップの5)

 プロジェクトの運営において、直接的にエネルギー(燃料、電気)を利用することによる温室効果ガス排出は重要となる可能性があります。GPG-LULUCFでは、固定機器による排出については、燃料量や消費エネルギーに関する適切な排出係数を用いた推定方法が、可動機器による排出については、燃料ベースあるいは距離ベースのアプローチによる推定方法があることを示しています。

(h) モニタリング計画(ステップの6)

 モニタリングにあたっては、プロジェクト地域が多くの小規模土地所有者により所有されている場合もあることを考慮し、プロジェクトレベルのモニタリング手続きと、パフォーマンスを担保する区画レベルにおけるモニタリング指標を開発することがグッドプラクティスとされています。また、モニタリングの頻度は、炭素蓄積の変化速度や植林のローテーション期間、耕作サイクル等を考慮して決定すべきとされています。さらに、プロジェクト地域全体を簡易にフィールド検証できる指標を開発することがグッドプラクティスとされています。

(i) 品質管理・品質保証(ステップの6)

 品質管理・品質保証(QA/QC:quality assurance / quality control)計画は、(1)信頼できるフィールド測定の収集、(2)フィールドデータ収集に用いられた手法の検証、(3)データ入力と分析技術の検証、(4)データメンテナンスと保管、という4つで構成され、プロジェクトの文書化とcover procedureの一部とすべきとされています。

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