センター長あいさつ

三枝信子センター長

2023年に日本が議長国を務めたG7サミット(主要国首脳会議)では、現在私たちの住む地球が「気候変動」「生物多様性の損失」「汚染」という3つの世界的危機に直面していること、「2050年ネットゼロ」に向けて取り組みを加速していく必要があることが呼びかけられました。

国立環境研究所地球環境研究センターは1990年に発足し、成層圏オゾンや地球温暖化、生物多様性といった地球環境の幅広い領域をカバーする部署として活動を開始しました。その後、特に2001年以降は、地球温暖化に関わる諸問題の現象解明や、脱炭素社会(実質的に二酸化炭素の排出がゼロとなった社会)をつくるための問題解決型の研究などを重点的に推進しています。

地球環境研究センターの強みの一つは、1990年代に開始した地上・船舶・航空機による観測を基盤とし、2009年からはじまる温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)シリーズによる観測(現在、衛星観測センターが実施)とも連携し、温室効果ガスに関わる地球規模での観測と解析、国内外の関連データの収集と公開を長期にわたり実施していることです。また、もう一つの強みは、社会のニーズの変化に応え、基盤的研究から応用研究まで、柔軟かつ多方面に研究を発展させることのできる人材が集まっていることです。

2016年に発効したパリ協定により、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2°Cより十分低く保つとともに1.5°Cに抑える努力を追求すること、そのために、今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収をバランスさせるという目標が掲げられました。しかしこの目標を達成するための時間枠は急速に狭まっています。この緊急の目標に対し、さまざまな対策が地球規模でどれだけの効果を発揮しているか、地球環境を持続可能な範囲で維持するには、あとどれだけの努力が必要かといった問いに対して、最新の科学的知見をもって応えることで貢献していきたいと思います。

2024年6月 三枝 信子