CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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※6 クーラン条件とは、「メッシュ」によって解析空間を離散化したモデルで表現するとき、計算を破綻させないために必要な条件のことです。こうした計算では、時間ステップが用いられますが、その時間ステップは、実際の波動が隣の節点(あるいは格子/ボックス)に到達するまでの時間よりも小さくなくてはならないのです。編集局:なぜ8秒にしたのですか。八代:風を計算するときに、隣の隣の点まで、ボックスだったら隣の隣のボックスまで、1ステップの間に風が進んでしまうと、計算が不安定になって破綻します(クーラン条件※6)。それを防ぐためには、時間刻みを短くして、風による1ステップあたりの移動距離を短くする必要がある。だから、解像度を半分にすると、時間間隔も半分にしないといけないわけです。それで、安定して計算できるぎりぎりが、今回は8秒だったということです。編集局:1ステップ=8秒という数値はどうやって出したのですか。うと、日本列島の近くだけ5kmとか2kmとかのメッシュサイズでシミュレーションしています。こうして解像度を上げると、必然的に計算量が莫大になるので、日本列島付近だけメッシュサイズを細かくし、それ以外は細かい計算をしないことで全体の計算量を減らしているのです。 今回の論文のスーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーションは、全球すべて3.5kmメッシュという解像度で行っています。だいたい解像度が2倍に上がる、たとえば20kmが10kmになると、格子の点の数が4倍になります。格子の点の数が水平方向だけで4倍くらいになると、計算する時間の刻みを半分にしないとうまく計算できないので、それでさらに2倍になり、結局全部で8倍くらいの計算量になる。つまり、解像度が倍になると計算量が8倍(2の3乗倍)になるのです。今の気象庁の計算を20km格子とすると、今回行った3.5kmの格子というのは、解像度がだいたい6倍ですよね。そうすると6の3乗、つまり、200倍くらい計算量が多いということになります。 それから、時間刻みに関してはすごく短くて、1ステップが8秒です。

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