CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
109/140

 たとえば、モデルを一つ走らせてみて「2日後に雨が降りました」という結果が出たとします。とはいえ、本当は降っていないかもしれない。でも、初期値アンサンブルで計算した結果ならば、統計的に(確率的に)扱うことができます。 では、それを100回やったとします。「降った」のが30回、「降らなかった」のが70回だとすると、結果が五分五分ではなかったことがわかります。サンプル数を増やすことによって、統計的に、よりrobustな(しっかりとした)結果を得ることができる。編集局:なぜ、こういうアンサンブルを使うのですか。八代:天気予報にも初期値が正しくない場合があるかもしれません。今回は全球3.5kmメッシュだから、水平で約1億点、3次元だと約100億点のデータの入力点がありますが、その全部に計算式であるモデルの入力値となる観測データがあるわけではないのです。あやしい初期値もいっぱいあるわけですよ。その初期値をちょっとずらして計算したら、どのくらい結果がずれてくるか。つまり、初期値が合っていないと思われるから、その「合ってなさ」が6時間後にどういうふうに影響するか?どういう幅で現れるか?ということを、知ることができる。編集局:それが、「当たる」確率を上げるということですか。たくさん初期値を入れて計算することによって、何が「よくなる」のかをもう少しくわしく教えていただきたいのですが。八代:単純な予報として、雨が「降るかもしれない」「降らないかもしれない」という結果が、2回計算して1回ずつ出たとします。そうすると「いったい、どっちなんだ」ということになりますよね。編集局:それがなぜrobustだといえるのかがよくわからないのです。よく統計的に「有意に差が出る」とか「有意に何とか」っていいますよね。それアンサンブルで、統計的にrobustな(しっかりとした)結果を出す

元のページ  ../index.html#109

このブックを見る