CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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 100本シミュレーションしても、どんなシミュレーションもこんな形になる、という点もあれば、全然自信のないような形になる点もあるわけです。そのときに、自信のない形になる点は、観測データの値を信じましょう、シミュレーションで同じような結果が出る点は、シミュレーションの結果をより信用して、観測データで修正する量というのはちょっとにしましょう、というような重みづけをしているのです。 たとえば、観測データを全部、100%信用してガンと入れると、シミュレーション側の結果をガシャンと変えてしまいます。そのあともう一回シミュレーションしたときに、やっぱり同じようにシミュレーションが間違うと、観測データとシミュレーションがいわば「けんか」し続けて、それがノイズになってしまうのですね。それで、観測データが先生だとすると、強く教えなければいけないところは強く教えて、そうでないところは、割とシミュレーションに任せてあげるというように、うまく間をとってやることをしています。八代:そのばらつきの情報を使って、うまくデータ同化をしたのです。 データ同化とは、シミュレーションの結果を、観測データが存在する場所の、観測データを使って修正することですが、修正の度合、つまり、どのくらい修正したらいいかについての情報が必要なのです。いろいろな方法がありますが、今回のアンサンブルデータ同化では、アンサンブルをたくさん回して、6時間後に出る標準偏差のグラフにあるような「山」の形を観測データの重みづけに利用したのです。編集局:なぜ、そのような重みづけをするのですか。八代:アンサンブルによる標準偏差のグラフにあるような山の形がどう出るかで重みづけをすると、シミュレーションの結果とあまり「けんか」しないで、観測データをたくさん入れることができるのです。編集局:では、6時間後のシミュレーションの結果を、この点の場合はシミュレーションを重視する、別の点の場合は観測値を重視する、という感じで修正していくのですか。

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