CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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八代:いつもはするのですが、もう計算時間が足りなかったので、1回目の分だけで、とりあえずベンチマークをとって、このパターンはそれで終わっています。けれども、いつもはそのまま続けてやっています。編集局:それだけで1800兆の計算がされているので時間がかかる、と。八代:そうですね。 編集局:実際に時間がかかるのは、計算よりもデータの転送が問題だとか。八代:はい。大気のシミュレーションは、スーパーコンピュータの性能を全然使い切れていなくて、計算するよりも、データを読み出して結果を格納するというような、データを移動させる時間の方がたくさんかかるのです。 たとえば、データが来るのを待っている間、計算機は止まっているので、具体的には計算機の性能を10%も使えていないというのが現状です。それをどれだけ速くするか、データの移動をいかに減らすか、ということが、ここ10年くらい、一番のネックになっています。計算そのものを速くするのは結構簡単です。データの移動を速くするのは、それよりずっと難しいのですよ。(時間・空間を細かくするだけでなく、アンサンブルを用いることによって、計算結果を確率的に捉え、予測の困難さをできるだけ軽減する努力は本当に大変なものです。そこで次に、この膨大な計算量と計算時間をどのように軽くしていったかについてお聞きすることにしました。) データをメモリから読み出して計算して戻す回数が少なく、同じ変数の値を何回も繰り返し計算するような方法だと、計算機の100%に近い性能を出すことができますが、気象を扱う場合は、そういうタイプの計算にはならないのです。たとえば、分子の位置を計算するような場合は、何回も反時間や電力がかかるのは、計算よりもデータの転送

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