CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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 私は、陸域生態系における物質の循環を扱うモデルを開発し、主に地球温暖化に関する研究にコンピュータ(計算機)を用いています。生態系は多様な生物から構成される極めて複雑なシステムですが、それをコンピュータの中でどうやって再現しているかを解説します。 まず生態系とは、生物の集団とその環境が結びついてできた系(システム)と定義されます。熱帯雨林やブナ林のように自然のものはもちろん、皆さんの身近な雑木林や草地もある種の生態系と見ることができます。生態系を考えたとき、まず思い浮かぶのは木や草など植物の姿ではないでしょうか。それは生態系で最も大きなバイオマス(生物の質量)をもつのがほとんどの場合は植物だからで、もちろん昆虫や動物、さらには目に見えない微生物まで様々な生物から生態系は構成されています。もう一つ大事なのが環境で、生物が活動することで生態系の環境、例えば光や温度、水分の条件は大きく変わります。 では、生態系をモデル化してシミュレートする、とはどういうことでしょうか? 単純に考えると、そこに棲む生物の振る舞いを一つひとつ数式で表し、またそれらを取り巻く環境条件を数式から解くことで、コンピュータの中に生態系を再現(シミュレーション)できそうです。しかし実際には、生態系には膨大な種類と数の生物が棲んでおり、しかもお互いに影響を及ぼし合っているため、数式を作って計算することは容易ではありません。 また、光や温度などの環境も、場所ごとに異なるうえに時々刻々と変化す01生態系モデルのいろいろとその作り方伊藤昭彦計算機による生態系の再現複雑なものを簡単にして研究に役立てる

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