CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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※1 原登志彦 編著(2014)「地球環境変動の生態学」共立出版デルの方が良い場合もあります(図1左)。図1:生態系を簡単化しモデル化する方法を示す模式図。 植物や動物・微生物、さらには土壌の約半分は炭素でできているので、炭素の流れをきっちりと追うことにより、生態系の振る舞いをおおよそ知ることができます。炭素の振る舞いを追うことができれば、CO2やメタン(CH4)といった温室効果ガスの挙動についても知ることができます。ここで取り上げたのは生態系モデルのごく一部ですので、興味をもたれた方は生態学の教科書(原 2014など)※1を参照して下さい。 モデルで生態系の振る舞いをシミュレートすると、どのように地球温暖化研究に役立つでしょうか? まず、温暖化の原因となっているCO2などの温室効果ガスのグローバルな循環の解明に使うことができます。大気中のCO2が人間活動からの放出によって増加していることはよく知られていますが、放出分のうち大気に残る割合は45%程度で、残り半分強は海洋や陸域に吸収されると考えられています。 さまざまな観測や分析により、陸域に相当量の吸収が生じている可能性が示されていましたが、その分布やメカニズムは永らく未解明でした。現在では、地上や人工衛星での観測体制が整い、陸域でのCO2吸収の証拠が積み重ねられていますが、それを補強する証拠は生態系モデルの研究からも得られています。炭素の動きを扱うモデルで、大気条件や森林伐採など現実的な影02温暖化研究での使いみち

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