CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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図1:CO2濃度2倍増による放射加熱の鉛直分布。3つの気候モデル(MIROC3、MIROC5、HadGEM2-A)における放射計算の結果を黒、青、赤で示し、LBL法の結果を緑で示します。大気の状態として中緯度夏季の晴天を仮定します。の増加による成層の変化がモデル間でばらつくのは、放射加熱の不一致が要因の一つだと考えることができます。 モデル間のばらつきをこのように理解できた場合、次に問題となるのは、予測結果の信頼性が高いのはどのモデルかということです。ここで検討の対象となる放射加熱の計算方法においては、ライン-バイ-ライン法(以下LBL法と略記)と呼ばれる最も精密で信頼性の高い計算方法が存在します。一方、気候モデルにおいては計算コストを抑えるために、より簡略化した計算方法が採用されています。そこで、気候モデルで計算された放射加熱がLBL法とどれほどよく一致するかを確かめました(図1)。 その結果、一部の気候モデルでは大気の中層~下層に大きな不一致が見られ、他の気候モデルと比べて信頼性が低いことがわかりました。このような知見は、雲の対流圏調節の不確実性低減や、ひいてはモデルの信頼性を高めることに寄与するものと期待されます。

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