CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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 私は、大気汚染のシミュレーションをしています。ニュースに出てくる言葉でいうと、PM2.5(エアロゾルの一部)、黄砂、オキシダントなど空気中に含まれる微量な物質を研究の対象にしています。例えば、これらの物質が「日本付近の空気」の中にどのぐらい存在しているか(空気中の濃度がどれくらいか)をシミュレーションによって推定しています。 また、大気汚染のシミュレーションは、PM2.5が「地球の気候変動」にどの程度の影響を与えるか、ということを調べる際にも使われます。「日本付近の空気」と「地球の気候変動」の話は、全然違うことのように思われるかもしれません。しかし、大気汚染は、大気環境と気候変動の両方に影響を与えています。そこで、私はこの両方の影響に注目したシミュレーションを行っています。 「日本付近の空気」の大気汚染シミュレーションを行う際には、特定のある領域のみを計算対象とする「領域シミュレーション」を行います(図1b)。シミュレーションの対象領域内を高い解像度(5kmから20kmのグリッドサイズ)で計算します。ただし、コンピュータの計算能力には限界があるので、高解像度計算のためには、シミュレーションの対象領域の広さを小さくする工夫をします。高解像度で計算すると、都市部での人間活動から発生した大気汚染物質をきちんと取り扱うことができ、より現実に近い大気汚染の分布を計算することができます。01大気汚染のシミュレーションとは?五藤大輔日本スケールから地球スケールを“シームレス”に取り扱う大気汚染シミュレーション

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