CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
42/140

Environment Programme:UNEP)をはじめいろいろな研究機関や行政組織で全世界的な水ストレスに関する研究がおこなわれ、その保全や再利用、脱塩等も含めた持続可能性を目指す新たな水資源管理への関心も高まっています。 水循環を把握する方法には、数値モデル・現地観測・リモートセンシング等があります。なかでも、リモートセンシングは空間把握能力に優れており、近年のコンピュータとそれによる画像解析手法の急激な進展もあいまって、ポイントレベルでの観測や測定では不可能な物理パラメータの空間異方性(空間的なバラツキ)の評価に威力を発揮します。 しかし、河川や湖沼などの地表水に比べて地下水流はリモートセンシングでも把握しにくく、それによって得られる水資源量や利用可能量、必要量にも大きな相違があります。そのため、陸域-海域間での水循環の相互作用(下記の水文学の定義を参照)に関しても未解明な点が多く残されています。とはいえ、このような水資源のより正確な現状把握や将来予測をめざして、リモートセンシングの活用方法は近年長足の進歩をとげており、大気組成、炭素循環、水循環、エネルギー循環、地表面あるいは地球内部等の重点的な分野において、その重要性がどんどん増しているところです。 水文学は地球の水の発生や循環、分布、また、それらの物理的・化学的特性と人間活動に対する反応を含む物理学的そして生物学的環境への相互作用を扱う学問です。より具体的には、陸水(河川・湖沼・地下水など)とその出口としての海域を含む水域での水資源について、水量や水質の観点から人間活動と気候変動による影響を評価します。なかでも、地表水-地下水間の相互作用の定量的な把握は水循環のみならず物質循環や生態系評価の観点からも重要です。 しかし、浸出計による計測、水温や塩分、染料などのトレーサー(流体の流れや特定の物質を追跡するために使われる)、あるいは同位体による評価では、流域スケールや地域スケール等の広範囲に及ぶ時空間的な動態把握には限界があります。一方、数値モデルを用いたシミュレーションは実現象の挙動を調べるために、対象となる現象をコンピュータ内部で模擬的な情報としてモデル化し、計算資源を最大限に活用してモデルの挙動を調べることになります(コンピュータ内部で何度でも再現可能になります)。

元のページ  ../index.html#42

このブックを見る