CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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 海には20万種を超える多くの生物が棲んでいますが、陸上で生活する私たち人間も海が有する機能や資源などを利活用し、多大な恩恵やサービスを授かりながら生活をしています。しかし、海では次々と新たな環境問題が浮上しています。重金属汚染による健康被害や赤潮・貧酸素水塊などの富栄養化問題に加え、近年では生物資源の減少、放射性物質、海底鉱物資源開発、海洋ごみ、マイクロプラスチック、気候変動(水温上昇、海面上昇、海洋酸性化など)など枚挙にいとまがありません。 世界的スケールでみると近年の海の状況はあまり芳しくないと報告され、持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)においても「海の豊かさを守ろう」が17の目標のうちの一つに掲げられるほど、海洋と海洋資源の持続可能な開発・保全・利用は世界で取り組むべき喫緊の課題になっています。 海の環境問題で真っ先に挙げられるのは汚染です。その内容や深刻度、問題を起こす汚濁負荷物質は実に様々ですが、原因が陸域の人間活動にある点が共通しています。そしてそれが生物や生態系に影響を及ぼし、生物生産性や生物多様性の劣化へと繋がっていきます。 とくに湾や内海のように陸地に周囲を囲まれた閉鎖性海域は、汚濁負荷物質が溜まりやすく、陸域の影響を受けやすいため、水質悪化や生態系破壊が起こりやすいといえます。わが国では東京湾、伊勢・三河湾、大阪湾・瀬戸01海を取り巻く環境問題東博紀スーパーコンピュータが切り開いた閉鎖性海域の水環境・生態系の高解像度長期予測

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