CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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 本号では、地球環境研究センターニュース2018年8月号から2022年3月号にかけて掲載された、シリーズ「計算機で挑む環境研究—シミュレーションが広げる可能性」全10話と、2021年8月号・9月号に掲載された八代尚・主任研究員のゴードン・ベル賞ノミネートに関するインタビュー記事「スーパーコンピュータ『富岳』の性能を最大限に活かす方法を探る」を、まとめてお届けします。 シリーズ全10話では、国立環境研究所(以下、国環研)のスーパーコンピュータを利用し第一線で研究を行う10人の研究者に、現在取り組んでいる研究テーマについて、その目的、重要性や有用性、計算結果の信頼性や客観性、計算機の性能向上が研究に与えた影響などについて解説していただきました。国環研のスーパーコンピュータが、環境問題を解決するために様々な研究に利用され、そのいずれもが将来を見据えた内容であることをおわかりいただけると思います。そう遠くない未来に、「この当時はこのくらいのところでがんばっていたんだ」と思えるような時代が来るのではないでしょうか。また、八代尚・主任研究員へのインタビューでは、スーパーコンピュータ「富岳」の気象計算への利用を通じて、天気予報、カオス的特性、アンサンブル計算、データ同化などのソフト的側面と、CPU、メモリ、データ精度などのハード的側面とから、気象の大規模計算の現在と未来、計算機資源の効率的な利用について、興味深いお話を聞くことができました。 国環研のスーパーコンピュータはその導入以来、所内研究者のみならず、多くの所外研究者にもご利用いただき、多岐にわたる環境問題に関わる研究成果の創出に貢献してきました。地球温暖化に関わる研究は、スーパーコンピュータ導入当初から現在まで脈々と受け継がれ発展していますが、近年は数値モデルの役割も多様化し、将来予測やプロセス研究に加えて、観測と連携したデータ同化、あるいはデータ同化を利用した温室効果ガスのフラックス推定などにも頻繁に利用されるようになってきました。 国環研のスーパーコンピュータは「富岳」のような世界最高レベルの計算機性能は持ち合わせていませんが、環境研究に有用なスーパーコンピュータシステムとして、これからも引き続き多くの研究者にご利用いただき、環境問題の解決や計算機科学の発展に貢献していくことを願ってやみません。国立環境研究所地球システム領域シニア研究員 秋吉 英治2023年1月出版にあたって

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