CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
57/140

 私は、数値モデルシミュレーションとデータ同化技術を組み合わせて、温室効果ガスや大気汚染物質の濃度や放出量をより正確に再現するための研究をしています。それと同時に、より精度の高いシミュレーションを行うために数値モデルそのものの改良を行っています。今回は、この連載で他の著者の皆さんが紹介する「現実の世界」と「シミュレーション」を繋ぐ話からさらに潜って、「シミュレーション」と「コンピュータ」に関わる研究を紹介しようと思います。 科学はまず、自然の観察から始まりました。目に見えている世界は、たとえそれが宇宙のどこででも、同じルールに従って動いているに違いない。そのルールを探すことを出発点に、科学研究は発展してきました。自然を相手に実験や観測を繰り返すことで、その中から理論を導き出し、そして理論を元に新たな理論を発見したり、新たな実験のアイディアをひらめいたりしてきたのです。この「実験・観測」と「理論」は、科学を支える大事な二つの手法です。 そうしているうちに、科学者は考えました。これまでに得られた沢山の理論・法則を組み合わせることで、自然に起こることを再現できないだろうか、と。これが第3の科学的手法と呼ばれる「模擬:シミュレーション」です。自然は複雑で、いろいろな現象が同時に起こっています。そのため、シミュレー01シミュレーションと気象・気候学八代尚より速く、より多く、より長く、より複雑にシミュレーションを支える技術

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る