CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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今日も最新鋭のスーパーコンピュータ(スパコン)が世界中の気象予報を支えています。黎明期から現在に至るまでずっと、気象気候分野の科学者はコンピュータのヘビーユーザーです。 気象・気候・環境の科学にとってシミュレーションが欠かせない理由は明快です。私たちの住む地球が一つしかないからです。過去にもしもこんなことがなかったら今はどうなっていただろうか、今こういうアクションを起こせば未来はどう変わるだろうか。現実の世界で地球規模の試行錯誤を行うことはできません。しかし、確かであると皆が認める科学法則を組み合わせた地球の模型(モデル)を構築できれば、バーチャルな世界で好きなだけシミュレーションを行って、現実の世界に役立てることが可能になります。 また、実際の観測が難しい現象も、シミュレーションを通して知ることができます。たとえば、研究所がある茨城県つくば市で今日降った雨が、何日前にどこで蒸発した水なのかを知るのはかなり大変です。しかし、シミュレーションでは水蒸気の流れを追いかけて、定量的に調べることができます。写真1:リチャードソンが1922年に著した “Weather Prediction by Numerical Process” の扉(右ページ)。左ページはリチャードソンが行った西ヨーロッパ(ドイツ付近)の気象予測での計算格子点分布の図。白抜きのボックスでは気圧、灰色のボックスでは運動量を計算しました。(出典:イギリス気象庁のTwitter https://twitter.com/MetOffice_Sci/status/1106533001221947392)

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