CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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ている」「曇っている」場所の区別もかなり大ざっぱになってしまいます。 また、100km四方の平均値では「相対湿度が100%になっていない」=「雲が生まれない」と判定してしまうけれど、実際には「とても狭い領域で雨が土砂降りになっている」、なんて齟齬が生まれます。粗いモデルでは極端現象を捉えられないのです。 「よし、では空間解像度を上げよう!」と思っても、それはなかなか容易なことではありません。100kmメッシュ間隔を10kmメッシュ間隔にすると、水平方向の格子点の数は100倍に増えます。さらに、格子点の間隔が狭い場合、一般的にシミュレーションの時間刻みを小さくしないと数値計算は破綻することがわかっています。 この10kmメッシュの例だと、時間刻みも10倍細かくしなければいけません。そのため、同じ時間だけシミュレーション内の時間を進めようとすると、10倍のステップ数が必要となるのです。結果として、解像度を10倍上げると、計算量は10の3乗=1000倍多くなります。もし100kmから1km解像度まで100倍解像度を上げたら、計算量は100万倍になります。図1:全球の大気モデルの模式図。この例では水平方向は緯度経度で、鉛直方向は高度または気圧座標で格子を区切っています。左下の図では、それぞれの格子点で計算される大気中での様々な物理過程と、陸や海との熱・水のやりとりの過程が示されています。(出典:アメリカ海洋大気庁 https://celebrating200years.noaa.gov/breakthroughs/climate_model/modeling_schematic.html)

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