CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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 「気象・気候のシミュレーションを根本的に改善するには、1000倍も100万倍も性能が高いコンピュータが必要なんだ!」という理由はわかって頂けましたでしょうか。 では、今度はコンピュータの世界に目を移してみましょう。スパコンの世界では年に2回、計算性能を競う「TOP500」というコンテストがあります。国際的なルールに則って、膨大な数の連立方程式を解くプログラムの速さを「1秒間あたりの浮動小数点演算数(Floating-point Operation Per Second: FLOPS)」という指標で測ります。 TOP500は1993年からずっと続けられてきていています。1993年当時の世界1位のスパコンの性能は約60ギガFLOPSでした。では、2020年の世界1位のスパコンの性能はいくつでしょう。416ペタFLOPSです。27年でおよそ690万倍!ですね。人類の進歩においてこれほど急速に性能が向上した産業は電子計算機以外にないといわれています。そのスピードは、おおむね1.5年で性能2倍、10年でおよそ100倍のペースです(図2)。 ちなみに、1993年の500位のスパコンの性能は0.4ギガFLOPSでした。今(2020年)の最新のスマートフォン(iPhone11)で同じベンチマークを行うと、2ギガFLOPSの性能が出ます。私たちは25年前のスパコンを手のひらサイズで持ち歩いていることになります。1.5年でコンピュータの性能が2倍になるという経験則は、インテルの共同設立者であるゴードン・ムーアさんが発見したため、「ムーアの法則(Moore’s Law)」と呼ばれています。 コンピュータは生まれてから今まで、着実に性能を上げ続けてきました。しかし、その道は平坦なものではなく、いくつもの技術的困難を乗り越えてきました。 図3は、かなりマニアックですが、ここ40年くらいのコンピュータの演算装置(プロセッサ)に関する各種指標の時系列を示しています。上から順にスパコンのトランジスタの数、中央演算装置(CPU)に含まれる「コア」と呼ばれる構成単位あたりの演算性能、CPUの動作周波数、消費電力、そしてコアの数です。 一般的には、CPUの性能を向上させるには、配線の長さをなるべく短く03計算機の目覚ましい発展

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