CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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式を解く部分が全体の計算時間の半分以上を占め、そこさえチューニングすればかなりの性能向上が見込める、といったこともしばしばです。 ところが気候モデルには、アルゴリズム的な性質の異なる計算が多数あり、どれもあまり多く計算することなく次の変数の計算に移ってしまいます(このことを「演算密度が低い」といいます)。結局、プログラム中のあらゆる区間が少しずつ時間を消費していることになり、最適化のためには数十万行あるプログラムコードのすべてに目を配らなければ速くならないのです。 私たちは日本が誇るスーパーコンピュータ「京」や「富岳」といった計算機を用いて全球高解像度大気モデルNICAMの最適化を進めるなかで、このような厄介な性質をもつ気候モデルを効率よく最適化する方法を開発しました。 最も効果的だった手法は、まるで家計簿のように、すべてのプログラム区図4:NICAMを用いて行われた全球870mシミュレーションの図。白い部分がシミュレートされた雲(液体の水と固体の水)を表しており、下の3枚では熱帯域の積乱雲群を順にクローズアップしています。右下の図では最も雲が濃いところをピンク色に着色しています。(Miyamoto et al., 2013, GRL, https://doi.org/10.1002/grl.50944)

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