CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
69/140

間が消費する時間を一度に並べあげ、プログラムコードの中に小さくたくさん散らばっている「無駄な支出」=「減らせるはずの消費時間」がないかをチェックする方法でした。 こうしてNICAMは現代のスーパーコンピュータの性能をうまく引き出すことができるようになり、「京」を用いた計算では、当時世界で初めて1kmを切るメッシュ解像度での全球大気シミュレーションを、2万個のCPU(16万個のコア)を用いて実現しました(図4)。このとき、モデルの格子点の数は630億点、シミュレーション内の時間で1時間計算するのには4時間かかり、この時の実効計算性能はおよそ230テラFLOPSでした。また、48時間のシミュレーションで320テラバイトの時系列データを出力しました。 2019年にその役目を終えた「京」のあとを継ぎ、新たな日本の旗艦スーパーコンピュータである「富岳」が、もうすぐ運用を開始します(2021年より本格稼働)。富岳は設計当初から、単純なベンチマーク結果ではなく、実際の科学シミュレーションでの性能が向上することを重要視して開発が進められ、さまざまな科学分野のアプリケーションソフトウェアとのコデザインを行ってきました。 気象・気候分野からはNICAMだけでなく、気象予報や温室効果ガス排出量推定に用いられる「データ同化」の分野からアンサンブルデータ同化システムの一つであるLETKF(Local Ensemble Transform Kalman Filter)が選定され、シミュレーション科学とデータ科学の複合アプリケーションとしての性能向上を進めてきました。 富岳でのグランドチャレンジとして、3.5kmメッシュの異なる1024個の大気シミュレーション結果と、全球の気象観測情報を用いた全球高解像度・大アンサンブルデータ同化実験を予定しています。総格子点数はのべ4兆点、大気モデルが出力するデータ量は1ペタバイトにも達します。これはこれまでに人類が誰も到達したことのない規模の気象シミュレーションです。富岳はハードウェアの設置が2020年5月に完了し、さまざまな性能の調整が今まさに行われているところです。05スーパーコンピュータ「富岳」と気候モデルのコデザイン

元のページ  ../index.html#69

このブックを見る