CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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※3 排出ギャップ報告書2019, 国連環境計画 (翻訳:地球環境戦略研究機関) https://www.iges.or.jp/jp/pub/unep-emissions-gap-report-2019/ja※4 山形与志樹ほか「土地利用に関わるネガティブエミッション技術(LUNETs) 食料安全保障など持続可能な開発目標(SDGs)への示唆 -GCP/MaGNETワークショップ報告-」地球環境研究センターニュース2017年7月号※5 横畠徳太ほか「人類は食料危機を乗り越えたのか」地球環境研究センターニュース2013年8月号わずか7%程度しか減少しなかったのです。後述するように、パリ協定における目標の達成のためには、さらなる温室効果ガス排出の削減が必要です※3。 人間活動による二酸化炭素排出量の86%は化石燃料の燃焼により、残りが森林伐採などの土地利用によると考えられています※4。人口増加に対する穀物生産のために森林を伐採するなどして、特に発展途上国で、農地の拡大が進んでいます。伐採された森林は時間をかけて分解され、二酸化炭素が大気中に放出されます。森林伐採と農地の拡大は、二酸化炭素の放出をもたらすとともに、生物多様性にも影響を与えます。 この一方で、気候を安定化させるための重要な対策として、化石燃料の代わりにバイオ燃料作物を増産することが考えられています※4。ただし、バイオ燃料作物を増産するためには、それを栽培する広大な土地が必要となります。また、気候変動による乾燥化が進む地域もある中で、食料やバイオ燃料のための作物が生育するには、大量の水(降水や灌漑による水の供給)が必要となります。 将来起こりえる気候変動を考慮しつつ、食料やバイオ燃料生産のために必要な土地や水資源を確保できるか、気候変動が生態系に及ぼす変化を通して人間社会はどのような影響を受けるのか、気候変動やそれによって生じる影響を最小限に抑えるためにはどうしたらよいか※5を論じるためには、地球環境と人間活動を同時に取り扱う数値モデルを利用することにより、様々な過程の相互作用を考慮した分析を行うことが重要です。

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