CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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 気候モデルとは、大気、海洋、陸面などの気候システムの振る舞いをシミュレートするコンピュータソフトのことです。気候モデルの中には、世界の気候をシミュレートする全球気候モデルや、日本周辺など一部の領域だけをシミュレートする領域気候モデルなどがありますが、ここでは全球気候モデルの話にしぼります。日本国内では気象研究所や東京大学大気海洋研究所・国立環境研究所・海洋研究開発機構、世界では英国気象局など様々な研究機関が、それぞれ独自の全球気候モデルを開発しています。 気候モデルは、気候システムに関するいろいろな物理方程式(運動方程式、熱力学、質量保存則など)を解いていくことで、たとえば気温、風速、雲量、土壌水分量、海水の塩分量などの多くの物理変数の時間発展をシミュレートしていきます。計算量が膨大なので、シミュレーションにはスーパーコンピュータが利用されます。テレビなどで翌日の降水域の時間発展の予測をご覧になったことがあるかと思いますが、天気予報で使われているのは気候モデルの大気・陸面部分です。 人間活動による二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の排出、太陽活動や火山活動など、気候システムにとっての外部因子に変動があると、気候システムの状態(たとえば世界平均地上気温)が変化します。これらの外部因子の過去に観測されたデータを気候モデルに与えてやると、19世紀半ば以降に観測された世界の地上気温の長期変化傾向を計算することができて、その結果が01気候モデルと過去の気候変動塩竈秀夫よりよい気候変動対策の礎をつくる気候変動予測の不確実性の低減

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