CGER-I163-2023_計算で挑む環境研究
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 冬季の極域は一日中太陽光が当たらない極夜のため、気温が低下して極域の周辺を回る極渦という大きな低気圧が現れます。極渦を境に内外の物質の移動が抑制されるため、極渦の中でオゾン層を破壊する物質が生成されると、極渦というフラスコの中に閉じ込められたような状態になって、冬季の間に蓄積されていくことになります。 冬季に極域の気温がマイナス80℃くらいまで低下すると、ガス状の水蒸気、硫酸、硝酸などが粒子化して極成層圏雲(Polar Stratospheric Cloud: PSC)と呼ばれる雲が形成されます(写真1)。このPSCは養殖真珠の母貝となるアコヤガイの内側のように虹色に輝き、見た目は綺麗な雲ですが、PSCの表面ではリザーバーと呼ばれる比較的安定な塩素・臭素化合物がオゾン層を破壊する活性な物質に変換され極渦の中に蓄積されていきます。写真1:南極のマクマード基地で撮影されたPSC。見た目はアコヤガイの内側のように虹色に輝き、美しいが、オゾン破壊反応を引き起こす雲でもあります 。(出典:Wikipedia)By Alan Light from Charlotte, USA. At Commons: Alan R Light (talk · contribs) - Nacreous Clouds over the NASA Radome -4-, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=14503960

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