SEMINAR2022年8月号 Vol. 33 No. 5(通巻381号)

国立環境研究所公開シンポジウム2022 「未来につなぐ世界との絆-持続可能な地球を目指して-」でのポスター発表

  • 地球環境研究センター 研究推進係

国立環境研究所(以下、国環研)は、2022年6月23日に標記シンポジウムをオンラインで開催しました。

国環研では、気候変動、資源循環、自然共生、安全確保、地域共創、社会、適応、災害環境などさまざまな環境問題について取り組んでいます。これらの多くの研究分野において目指していることは持続可能な社会ですが、日本だけでは実現が難しく、国際的な協力の下での研究、取り組みが必要です。

今回のシンポジウムでは、これまで蓄積してきた研究の成果をもとに、「未来につなぐ世界との絆-持続可能な地球を目指して-」をテーマに、国環研が進める国際的な研究活動について、多くの方に知っていただく機会とするため、5つの講演とポスター発表をオンラインで開催しました。

地球システム領域からは、大気遠隔計測研究室の神慶孝主任研究員が「Lidarで繋がる世界の大気エアロゾル観測 -アジアの黄砂から南米の火山灰まで-」と題する講演を行いました。また、すべての講演の後ポスター発表が行われ、物質循環モデリング・解析研究室の伊藤昭彦室長と仁科一哉主任研究員が研究内容を紹介しました。

本稿では、2名のポスター発表についてご紹介します。なお、神慶孝主任研究員の講演概要は次号以降に掲載いたします。

温室効果ガスを監視する:パリ協定達成に向けて

伊藤昭彦(地球システム領域 物質循環モデリング・解析研究室長)

<発表者からひとこと>
気候変動対策の基礎となる温室効果ガスの監視について関心を持つ多くの視聴者に参加いただきました。国環研を中心に日本で行われているさまざまな観測や、モデルを用いた最新の研究について説明を行いました。

いただいた質問としては「CO2以外の温室効果ガスも対象としているか」「種類の異なる観測データをどうやって統合しているのか」「都市内にある緑地によるCO2吸収も重要ではないのか」などがありました。それらに対し、国環研ではメタンや一酸化二窒素などCO2以外の温室効果ガスを含む幅広い観測を行っていること、高度なモデルを用いて観測データの統合を図っていること、緑地を含む都市域の温室効果ガス収支に関する研究も進めていること、などを回答として説明しました。

持続的な窒素管理に向けて-国際社会と国環研の取り組み-

仁科一哉(地球システム領域物質循環モデリング・解析研究室 主任研究員)

<発表者からひとこと>
窒素の環境問題に係る話題提供として、国際的な動向について説明を行いました。いただいた質問としては、「反応性窒素の環境問題として何が重要な問題となるのか?」、「反応性窒素の環境中での挙動について」またポスターにはないものの、関連したトピックである「アンモニア燃焼とその問題」の質問を受けました。

過剰な反応性窒素は、さまざまな形態で、水、大気、土壌に存在して、負の影響を与えますが、それぞれの影響の濃淡は地理的にも異なること、また環境中での挙動については、生態系に沈着した反応性窒素が土壌から河川に移動して異なる場所の汚染を引き起こすことを例に挙げ、これらについて私達はモデル等を用いて研究に取り組んでいること等を説明しました。アンモニア燃焼の質問については、正負の影響があり、今後の研究課題であることをお伝えしました。

※当日の19題のポスター発表は、公開シンポジウム2022の特設サイト(https://www.nies.go.jp/event/sympo/2022/)からご覧いただけます。