2012年1月号 [Vol.22 No.10] 通巻第254号 201201_254007

自己紹介:地球環境研究センターの特別研究員 井上誠

地球環境研究センター 衛星観測研究室 特別研究員 井上誠

photo. 井上誠特別研究員

米国レイルロードバレーでの観測キャンペーンにて

2010年6月から衛星観測研究室に所属し、特別研究員として勤務している井上誠です。私は温泉と文学(e.g., 坊っちゃん)の街として知られる愛媛県松山市の生まれで、大学への入学を機に関東で生活を始めました。学生時代には気象学を専攻しており、「アジアモンスーン域における成層圏対流圏結合」というテーマで博士論文を提出しました。夏季アジアモンスーンの強化に伴って成層圏の循環がどのように変わるのか、成層圏の現象によって対流圏の大気はどのように応答するのかについて調べ、アジア域に成層圏と対流圏の力学的リンクが存在することを明らかにしました。この研究は、成層圏というはるか上空の現象が私たちの住む対流圏の気候と密接に関係していることを示唆するものであり、面白い成果が得られたと思います。

国立環境研究所では、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)によって得られたプロダクトの検証業務に携わっています。具体的には、地上設置の高分解能フーリエ変換分光計(地上FTS)や航空機による観測データとGOSATのプロダクトとを比較し、GOSATのセンサから推定された二酸化炭素とメタン濃度の妥当性を評価しています。私はもともと、広く配布されているデータを眺めて研究を行う「データ解析」人間でした。GOSATプロジェクトに従事してから、観測してデータを取得しそれらを加工して研究に利用できる状態にするまでのプロセスを最前線でみることになりました。最新の情報が頻繁に飛び交ういい位置にいると思いますが、国家プロジェクトの責任の大きさを目の当たりにすることもあります。当たり前のように公開データを使って研究してきたこれまでとは異なり、プロダクトの生成・配布のために多くのスタッフの尽力があることを実感することができ、身の引き締まる思いです。

日々の業務は、パソコンとのにらめっこにとどまりません。2011年1〜2月には宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国立環境研究所とが共同で行った航空機観測に参加しました。GOSATが関東上空を通過する時刻に合わせて二酸化炭素とメタン濃度の測定装置を搭載した航空機による観測を行い、GOSATデータの検証や地上FTSの検定などを行うという大きなキャンペーンでした。また、同年6月にはネバダ州・レイルロードバレーという砂漠地帯でのJAXAやアメリカの研究機関と共同開催の観測キャンペーンに参加しました。この観測の目的は、GOSATに搭載されているセンサの感度の経年変化を調べ、さらに放射伝達計算に必要な物理量を徹底的に測定することによってGOSATデータの精度を高めるのに資することです。私は約10日間の観測期間中、全天カメラを用いた雲観測を担当しました。また数名でチームを組み、計測装置とパソコンを取り付けた特殊なベビーカーを押しながら砂漠を歩いて、地表面の反射率を測定しました。この観測では、リモートセンシングや大気計測の最前線で活躍する海外の研究者と交流することができました。このように、GOSATプロジェクトは他機関との共同研究やフィールドワークが活発であり、研究者にとっては本当に恵まれた環境です。このような機会を大切にし、研究に邁進していきたいと思います。

最後に、つくばでの生活にも少し触れたいと思います。私は高校時代から研究学園都市「つくば」に憧れており、国立環境研究所での就業によってつくばに住むという念願がかないました。私の住んでいるアパートの周りはいい方ばかりで、挨拶をするのが日課になっています。自転車での通勤の日々ですが、北関東の冬の寒さが身にしみます。車がないと少し不便かなとは思いますが、なかなか遠くに行けない分、研究に集中できる(せざるを得ない)のがいいですね。友達は少ないですが、元来話好きです。今後も国立環境研究所の多くの方と知り合いになり、交流・議論ができればうれしく思います。

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