2013年6月号 [Vol.24 No.3] 通巻第271号 201306_271008
【最近の研究成果】 2010年南アマゾン旱魃に関するイベント・アトリビューション研究
極端な気象現象が発生した際、「これは地球温暖化のせいで生じたのか?」という疑問がわく。しかし、気象現象は温暖化がなくても発生するものなので、個別のイベントが温暖化に起因するかどうかを断定することは、原理的にできない。一方で、同じようなイベントが発生する確率や、発生した場合の強さに対する人間活動の影響に関しては、気候モデルを用いて推定することが可能である。このような研究は、イベント・アトリビューション[気象イベントの要因推定]と呼ばれ、気候変動研究の新しい分野として注目され始めている。
われわれは、気候モデルMIROC5を用いて、「人為起源(温室効果ガスや大気汚染物質の変化など)および自然起源(太陽活動と火山噴火)外部強制力を与えた実験」と「自然起源外部強制力のみ与えた実験」をそれぞれ100メンバーずつ計算し、2010年に発生した南アマゾン旱魃の発生確率が、人間活動によってどの程度変化していたかを推定した。解析の結果、その年の海面水温の内部変動と人為起源外部強制力の両者が、旱魃の発生確率を高めていたことが示唆された。ただし、この要因推定の結果は、モデルの誤差補正手法に敏感であり、さらなる検討が必要であることもわかった。
本研究の論文情報
- An event attribution of the 2010 drought in the South Amazon region using the MIROC5 model
- 著者: Shiogama H., Watanabe M., Imada Y., Mori M., Ishii M., Kimoto M.
- 掲載誌: Atmos. Sci. Let., (2013) DOI:10.1002/asl2.435