2014年6月号 [Vol.25 No.3] 通巻第283号 201406_283005

国立環境研究所一般公開「春の環境講座」を開催しました

  • 地球環境研究センター 交流推進係

2014年4月19日(土)に、科学技術週間に伴う国立環境研究所一般公開として「春の環境講座」を開催しました。昨年より約2割多い519名の方々に研究所にお越しいただきました。地球環境研究センターは、地球温暖化研究棟で地球環境観測や温暖化影響モニタリングの展示、発電量表示システムを備えた自転車発電体験を行い、メイン会場の大山記念ホール(中会議室)では、「ココが知りたい生パネル—そうだったのか地球温暖化—(会場参加型パネルディスカッション)」を午前・午後の2回開催しました。さらに新企画として、地球温暖化研究棟のグリーンカーテンから株分けしたパッションフルーツやゴーヤの苗を来場者にプレゼントしました(写真1)。

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写真120cmほどに大きく成長したパッションフルーツの苗・ゴーヤの苗を100本以上お配りしました

一般公開では、私たちの研究成果を来場者の方々にわかりやすくお伝えし、貴重なご意見・ご質問等をいただくとともに、いろいろな問題について一緒に考えることができました。以下ではこのうち、地球温暖化研究棟での公開内容についてご報告します。「ココが知りたい生パネル—そうだったのか地球温暖化—」については、別稿で詳しくご紹介します

1. 「自然環境」、「宇宙航空技術観測」、「地球環境未来予想図」のテーマ別展示

今回の展示では、地球環境研究センターの様々な研究を、一般の方々の目線に立って紹介したいと考えました。例えば、地球温暖化の「自然環境」への影響を検知する研究のなかから、影響が現れやすい山岳生態系とサンゴ礁のモニタリング結果を展示・説明しました。ポスターサイズをはるかに越える大判写真や現地からのリアルタイム画像、海洋観測に必要な機材等を展示し、自然環境の臨場感を豊かにしたうえで、注目すべきポイントをご説明しました(写真2、写真3)。

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写真2高山帯の雪解けの時期や植物の成長、紅葉等の時期を現在・過去で比較することにより地球温暖化の影響が目で見えるようになります

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写真3海の中のサンゴの経年変化(白化の有無など)を比較することにより地球温暖化の影響が現れているかどうかを確認できます

さらに、「宇宙航空技術観測」エリアでは、民間航空機や人工衛星を使った全世界の温室効果ガス濃度観測の方法と、得られたデータをわかりやすくグラフ化するなど説明と解説を行いました。実際に航空機に搭載された測定機材や衛星の模型なども展示して、イメージがわきやすいように工夫しています(写真4、写真5)。

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写真4世界の空を飛び回る旅客機に研究所が開発した小型のCO2濃度測定器を積みこみ、そのデータを研究所に集めて解析するプロセスを説明しています

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写真5世界で唯一温室効果ガスの観測を主目的とする人工衛星「いぶき」に関する説明を行う研究員。宇宙から地球を電磁波の「目」で見ることによってメタンとCO2の濃度を測定できます。その測定結果を地球の形をしたスクリーンに投影しています

「地球環境未来予想図」エリアでは、最近注目されている異常気象と地球温暖化の関係や様々なシナリオに基づく将来の温暖化影響の予測などについて説明しました(写真6)。

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写真6現実の地球を使って温暖化の実験をすることは出来ないので、将来の地球の気候を予測したり、異常気象と地球温暖化の関係を調べたりするには、コンピュータ内に仮想的な地球を作成して数値実験(シミュレーション)します。その結果をご説明しました

2. 様々なデータ取得方法・解析

(1) 日本と世界の二酸化炭素(CO2

研究所は普段の生活や企業の経済活動など含め、日本全体から排出される温室効果ガスの量を推計しています。世界の国々や日本のCO2排出量を、わかりやすく立体的に表現してみました(写真7)。

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写真7世界各国のCO2排出量の比較ができる立体グラフです。棒の高さがその国の排出量を、人形のもつ円の面積がその国の一人あたりの排出量を示しています

(2) 気球を使って上空のデータを得る

研究は机の上や実験室の中だけで行われているわけではない!ということで環境の研究者は外に飛び出してデータを取ってきます。写真はラジオゾンデという測器を気球に取り付け、それを飛ばして高いところの空気中にある温室効果ガスを調べる研究の説明です(写真8)。

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写真8CO2ゾンデ観測について小型気球と模型を用いて説明しています

(3) 研究成果を「見せる化」する

大型タッチパネルを利用した海水中CO2フラックス(吸収と排出)分布に関する展示も行いました。海は広くて大きいですが、こうすることで、どの海域がCO2を吸収していて、どこの海域が排出しているかなどを見渡せます。地球温暖化と海の関係を知ろうとする研究では、このような可視化も重要な研究手法です(写真9)。

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写真9大型液晶パネルにはタッチセンサーがついていて、スマホのようにタッチして操作でき、大な海の中でCO2がどのように吸収・放出されているのかを見ることができます

3. 自転車de発電

おなじみのこの企画は、自転車をこぐ力を電気エネルギーに変え、いろいろな電化製品を動かしてみるというものです。大人用と子供用の自転車を用意し、消費電力の異なる白熱電球・LED電球をつけた場合に必要な力が違うことを体験いただきました。特に、液晶テレビを見るためには「安定した自転車こぎ」が必要なことも実感いただき、エネルギーの「見える化」によりエネルギーのありがたさを「体感」できたことと思います。なお、今回から大人用自転車では発電量を証明して認定書をプリントするすごいマシンが登場しました(写真10)。

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写真10手前の白い自転車では発電によっていろいろな電化製品を点けて、消費電力の違いと足にかかる力の関係を体験してもらっています。奥の黒い自転車では自らの発電力の限界に挑戦してもらい、発電量の認定書を発行しています

2014年7月19日(土)には国立環境研究所「夏の大公開」が開催されます。子どもから大人まで楽しんでいただける役に立つ企画を多数ご用意させていただく予定です。多くの方々のご来所を職員一同お待ちしております。

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