2014年9月号 [Vol.25 No.6] 通巻第286号 201409_286011

【最近の研究成果】 降水による大気中汚染物質の洗浄除去

  • 地球環境研究センター 炭素循環研究室 主任研究員 藍川昌秀

降水には大気汚染物質を溶け込ませて地面に落下することで、大気中の汚染物質濃度を下げる働きがある。溶け込む時期は雲を生成する時点(雲内洗浄)と、雨(あるいは雪など)として降下する時点(雲下洗浄)の2種類があり、今回は観測と数値シミュレーションから両者の寄与割合がどの程度であるかを相互検証・考察した。

観測は地点属性の異なる3地点(都市域、郊外域、田園地域)で行い、降りはじめから降水量0.5mmごとに降水を採取し、成分を分析した。このような観測は世界的に見ても限られており、降水と大気質との相互作用を考察するうえで、貴重な情報を内包している(以下、結果の概要)。

  • 1.降水が多くなると雲下洗浄は起こらないと仮定し計算すると、硝酸成分(硫酸成分とともに降水を酸性化する成分の一つ)については、3地点とも雲内洗浄及び雲下洗浄がそれぞれ約1/3及び2/3の寄与となった。
  • 2.硫酸成分については郊外域・田園地域では雲内洗浄及び雲下洗浄がそれぞれ約1/2ずつの寄与割合であったが、都市域では雲内洗浄の寄与割合が高く、成分濃度の高い霧や大気から雲への二酸化硫黄の付加が可能性として考察された。
  • 3.数値シミュレーション(3次元領域化学輸送モデルRAQM2)でも、硫酸成分に比べ硝酸成分で雲下洗浄の寄与割合が高い等、整合的な結果が得られた。
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降水量と降水中硫酸イオン濃度の関係 [クリックで拡大]

本研究の論文情報

The contribution of site to washout and rainout: precipitation chemistry based on sample analysis from 0.5 mm precipitation increments and numerical simulation
著者: Aikawa M., Kajino, M., Hiraki T., Mukai H.
掲載誌: Atmospheric Environment 95, 165-174, (2014) DOI: 10.1016/j.atmosenv.2014.06.015.

目次:2014年9月号 [Vol.25 No.6] 通巻第286号

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