2017年2月号 [Vol.27 No.11] 通巻第314号 201702_314005

最近の研究成果 体内でビタミンDを生成するための紫外線の有害性を考慮した有効な紫外線照射時間の推定

  • 地球環境研究センター 地球環境データ統合解析推進室 高度技能専門員 宮内正厚
  • 地球環境研究センター 気候モデリング・解析研究室 主席研究員 中島英彰

紫外線には、皮膚がんなどを発生させる有害性と、体内でビタミンDを生成しカルシウムの吸収を促進し、結果として骨の発育、健康維持などに寄与するという2つの側面がある。オゾン層破壊に端を発し、有害紫外線の増加が危惧され、その有害性が強調され、紫外線を極力避けることが奨励されるようになった。その結果多くの国民がビタミンD不足に直面するようになったと考えられ、健康被害などを含めて数多く報告[1]されるようになった。有害紫外線量はUV Indexなどによって広く使われ、それにしたがった防御などの注意が喚起されている。この論文はその有害紫外線量を知ることによってビタミンDを生成する紫外線量に変換する方法を確立し、皮膚に有害とされる最小紅斑紫外線量(MED)に到達しない、ビタミンD生成(10μg)[2]のための有効な紫外線照射時間を、場所、季節、時刻および皮膚の露出面積にしたがって示すことに成功した。その方法によって国立環境研究所が配信している「有害紫外線モニタリングネットワーク情報」からそれぞれの局におけるビタミンD生成の有効な紫外線照射時間を準リアルタイムで示した(http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/index.html)。

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スキンタイプ(国際基準)がIIIの人が、顔と両手の甲(600cm2)、肩、腕などを含めて(1200cm2)露出した場合、有害紫外線量(UV Index)に対応して皮膚内でビタミンD量(10μg)を生成するのに必要な時間、さらに皮膚に有害性をもたらすとされるMEDに到達する時間を示す

UV Index UVEry Estimated UVVitD Time to MED Time to produce 10 μg
600 cm2 1200 cm2
(W/m2) (W/m2) (min) (min) (min)
1 0.025 0.031 200 108 53.9
2 0.050 0.079 100 42.2 21.1
3 0.075 0.131 66.7 25.2 12.6
4 0.100 0.184 50.0 18.0 9.0
5 0.125 0.237 40.0 14.0 7.0
6 0.150 0.290 33.3 11.4 5.7
7 0.175 0.342 28.6 9.7 4.8
8 0.200 0.395 25.0 8.4 4.2
9 0.225 0.448 22.2 7.4 3.7
10 0.250 0.501 20.0 6.6 3.3
11 0.275 0.553 18.2 6.0 3.0
12 0.300 0.606 16.7 5.5 2.7
13 0.325 0.659 15.4 5.0 2.5
14 0.350 0.712 14.3 4.7 2.3
15 0.375 0.764 13.3 4.3 2.2

脚注

  1. Yorifuji J., et al. (2008) Craniotabes in normal newborns: The earliest sign of subclinical vitamin D deficiency J. Clin. Endocrinol. Metab., 93, 1784-1788.
    Shiraishi M., et al. (2014) Demographic and lifestyle factors associated with vitamin D status in pregnant Japanese women. J. Nutr. Sci. Vitaminol. 60, 420-428.
  2. 健康を維持するための1日当たりのビタミンDの摂取量は15 μgと見積もられる。 厚生労働省によると、ビタミンDの不足していない日本人成人は5.5 μgを食物から摂取している。ここではおおよそ必要な10 μgを紫外線によって体内で生成することとしている。

本研究の論文情報

Determining an effective UV radiation exposure time for vitamin D synthesis in the skin without risk to health: Simplified estimations from UV observations
著者: Miyauchi M., Nakajima H.
掲載誌: Photochemistry and Photobiology (2016) 92(6) 863-869, DOI: 10.1111/php.12651.

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