REPORT2023年2月号 Vol. 33 No. 11(通巻387号)

「人生初」尽くしの国際会議:事務職員の役割を考える海外出張 ~COP27 現地参加報告~

  • 林しおん(地球環境研究センター/衛星観測センター)

1. はじめに

2022年11月6日(日)から11月20日(日)まで、エジプト(シャルム・エル・シェイク)において気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が開催されました。地球システム領域からは、衛星観測センターの松永恒雄センター長、佐伯田鶴主任研究員、林と、物質循環モデリング・解析研究室の伊藤昭彦室長の4名が展示ブース、公式サイドイベント、会場内ジャパンパビリオンでのイベントに参加しました。本稿では、事務職員(今回が初めての海外出張)の視点から、COP27への参加報告を行います。

写真1 COP27会場正面入り口のモニュメント。
写真1 COP27会場正面入り口のモニュメント。

COP27について、詳細は下記をご覧ください。
気候変動適応センター COP27特集ページ:
https://adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/cop/index.html

2. 会場準備~展示ブースでの説明

日本から、成田→ドバイ→カイロ→シャルム・エル・シェイク、と2回の乗り継ぎを経て、丸一日以上かけて現地に向かいました。緊張の出国、入国(時差ボケを伴う移動は実に中学3年生のとき以来)を無事終えて、予定通り現地に到着しました。

写真2 到着時のシャルム・エル・シェイク空港。少々トラブルがあり深夜の空港に2時間ほど待機。深夜にもかかわらず、空港の出入口付近は到着客と到着客を待つタクシーの運転手たちでにぎわっていました。(写真提供:佐伯)
写真2 到着時のシャルム・エル・シェイク空港。少々トラブルがあり深夜の空港に2時間ほど待機。深夜にもかかわらず、空港の出入口付近は到着客と到着客を待つタクシーの運転手たちでにぎわっていました。(写真提供:佐伯)

11月6日(日)から会場に入り、参加者登録、ブース設営、イベント会場の確認を行いました。会場は常設の会議場に加え、展示や各国のパビリオンのためのプレハブが設置され、初めはどこを通っても同じに見えてしまい、迷路のようでした。

写真3 会場には巨大なプレハブが縦長にいくつも並んでいます。(写真は6日帰宅時の様子)
写真3 会場には巨大なプレハブが縦長にいくつも並んでいます。(写真は6日帰宅時の様子)

今回の展示ブースは、IGES(地球環境戦略研究機関)とRESTEC(リモートセンシング技術センター)、及び国立環境研究所(以下「国環研」)、さらに国環研内からも衛星観測センター、社会システム領域、気候変動適応センターという3機関5部署の合同出展となりました。各機関のポスターを掲示するとともに、それぞれが作成したビデオをつなげたものをモニターに常時上映しました。セキュリティチェック近くの建物のメイン入口真横、開催国であるエジプトパビリオンの真正面という、運よく立地に恵まれ、たくさんの人に足を運んでもらうことができました。

写真4 今回の展示ブースは「和」をイメージしたものとしました。写真は備え付けのディスプレイのHDMI端子を探すスタッフの様子(端子はディスプレイの裏にありました)。背景のポスターは衛星観測センター広報グループの力作です。
写真4 今回の展示ブースは「和」をイメージしたものとしました。写真は備え付けのディスプレイのHDMI端子を探すスタッフの様子(端子はディスプレイの裏にありました)。背景のポスターは衛星観測センター広報グループの力作です。
写真5 温室効果ガス観測技術衛星GOSATシリーズについて来場者に説明する佐伯主任研究員。
写真5 温室効果ガス観測技術衛星GOSATシリーズについて来場者に説明する佐伯主任研究員。
写真6 私も来場者の方々に説明をしました。全く慣れない英語での説明ですが、正しく伝わるよう最善をつくしました。(写真提供:佐伯)
写真6 私も来場者の方々に説明をしました。全く慣れない英語での説明ですが、正しく伝わるよう最善をつくしました。(写真提供:佐伯)

他の展示ブースでは、現地の農作物を原料とした試食品の提供を行いながら説明したり、鮮やかなコスチュームを着て写真撮影に応じながら説明したり、またVR(バーチャルリアリティー:ゴーグル型ディスプレイを使用して仮想空間を体験するもの)などの体験系イベントを行うなど、各団体が趣向を凝らして宣伝活動をしており、各国の文化にも触れることができました。私たちは11月7日(月)から12日(土)まで計6日間の展示でしたが、リモートセンシング技術を含め初めからGOSATに興味をもっている方たちもいれば、「何をしている組織なの?どこの国なの?」といろいろなことに広く興味をもっている方もいて、様々な分野、国、性別、年齢の方とお話しすることができました。多くの方と名刺の交換をしましたが、特に次回のCOP28開催予定国であるUAEの方が訪ねてこられ、2023年に向けて改めてまた話を聞きたい、とおっしゃっていたのが印象的でした。

足を運んでくれた方のみならず、近くのブース、現地の学生ボランティアの方など、数多くの方とも交流でき、オンラインの会議では得られない貴重な経験ができました。

3. 公式サイドイベント

COP27参加最終日の11月12日(土)15:00~(現地時間)、COP公式サイドイベント会場(ROOM7 Thebes)において、「New Generation of Greenhouse Gas Remote Sensing Satellites for Contribution to the Paris Agreement(新世代の温室効果ガス観測衛星によるパリ協定への貢献)」と題したサイドイベントを実施しました。

写真7 11月12日(土)15:00からCOP公式サイドイベント会場で行われた「New Generation of Greenhouse Gas Remote Sensing Satellites for Contribution to the Paris Agreement(新世代の温室効果ガス観測衛星によるパリ協定への貢献)」の登壇者。
写真7 11月12日(土)15:00からCOP公式サイドイベント会場で行われた「New Generation of Greenhouse Gas Remote Sensing Satellites for Contribution to the Paris Agreement(新世代の温室効果ガス観測衛星によるパリ協定への貢献)」の登壇者。

宇宙から二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などの温室効果ガスを観測するGOSATシリーズ3番目の衛星、GOSAT-GWが2024年度に打ち上げ予定です。衛星観測の焦点は、GOSAT、GOSAT-2の「点観測」やOCO-2の「線観測」から、GOSAT-GW、欧州のCO2M衛星、中国のTanSat-2衛星などの「面観測」に移りつつあります。これら次世代衛星をアピールするとともに、衛星やその他の地球観測データからパリ協定を踏まえた気候変動の緩和努力のモニタリング、今後のさらなる対策の立案のための「行動可能な情報(actionable information)」をどのように得るかについて、発表、議論しました。

写真8 サイドイベント後半のパネルディスカッションの様子。時間ギリギリまで質問が続きました。
写真8 サイドイベント後半のパネルディスカッションの様子。時間ギリギリまで質問が続きました。

現地で登壇予定だった方が急遽入国できないなどのハプニングがあったものの、松永センター長を含めた4名の現地登壇者と3名のオンライン登壇者により、前半の発表から後半のパネルディスカッションまで無事終了しました。

写真9 サイドイベント終了後、登壇者たちの集合写真。モデレーターの小田知宏主任研究員(米国USRA(Universities Space Research Association):右から2番目)が「笑って!」と声をかけた後の1枚。
写真9 サイドイベント終了後、登壇者たちの集合写真。モデレーターの小田知宏主任研究員(米国USRA(Universities Space Research Association):右から2番目)が「笑って!」と声をかけた後の1枚。

現地では約30人の方に参加いただき、オンライン生配信では最大75人に視聴いただきました。またアーカイブ映像でも200回以上再生(11/25時点)されており、同時にいくつものイベントが開催されるサイドイベント、それも土曜の午後の枠としては想定以上に多くの方に参加いただくことができ、とてもうれしく思っています。

アーカイブ映像 UN Climate Change – Events公式チャンネル:
https://www.youtube.com/watch?v=34bM1tA7WoM&list=PLBcZ22cUY9RJc1scZLmb8SdZezq3IM00i&index=173

4. ジャパンパビリオンでのセミナー

サイドイベント終了後の11月12日(土)17:15~(現地時間)ジャパンパビリオンにおいて「New Generation of Greenhouse Gas Remote Sensing Satellites for Contribution to the Paris Agreement(新世代の温室効果ガス観測衛星によるパリ協定への貢献) Part 2」と題したセミナーを行いました。

写真10 11月12日(土)17:15からジャパンパビリオンで行われたセミナー「New Generation of Greenhouse Gas Remote Sensing Satellites for Contribution to the Paris Agreement(新世代の温室効果ガス観測衛星によるパリ協定への貢献) Part 2」の登壇者。
写真10 11月12日(土)17:15からジャパンパビリオンで行われたセミナー「New Generation of Greenhouse Gas Remote Sensing Satellites for Contribution to the Paris Agreement(新世代の温室効果ガス観測衛星によるパリ協定への貢献) Part 2」の登壇者。

本セミナーは公式サイドイベントの第2部と位置づけ、公式サイドイベントでの発表・議論の積み残しをフォローアップしつつ、具体的な事例を紹介することを目的に開催しました。特にGOSAT-GW の新規性、パリ協定への適用について議論し、二国間協力に基づく国レベルでの温室効果ガスの排出量・吸収量の推定など、観測データのさらなる活用の可能性を紹介しながら衛星観測と排出量・吸収量の推定についてより詳しく説明しました。

写真11 サイドイベント、ジャパンパビリオンでのセミナーはともに、環境省小野洋地球環境審議官より冒頭にご挨拶いただきました。
写真11 サイドイベント、ジャパンパビリオンでのセミナーはともに、環境省小野洋地球環境審議官より冒頭にご挨拶いただきました。
写真12 ジャパンパビリオンでのセミナーにパネルディスカッションはありませんでしたが、ここでも参加者からたくさんの質問がありました。
写真12 ジャパンパビリオンでのセミナーにパネルディスカッションはありませんでしたが、ここでも参加者からたくさんの質問がありました。

こちらも土曜夕方の開催にもかかわらず、20名を超える方が常時参加され、活発に質問する姿が印象的でした。特に自国、また自組織との連携や、今後の活用に関する質問が目立ったように感じます。

松永センター長をはじめとする登壇者とのやり取りも多く、さながらパネルディスカッションのような雰囲気で、衛星観測センターとしてのCOP27最後のイベントを無事締めくくることができました。

写真13 ジャパンパビリオンセミナー終了後の集合写真。渡邉正孝教授(中央大学:画面中央のディスプレイ)には日本時間の深夜1:00からご参加いただきました。
写真13 ジャパンパビリオンセミナー終了後の集合写真。渡邉正孝教授(中央大学:画面中央のディスプレイ)には日本時間の深夜1:00からご参加いただきました。

5. おわりに

タイトル、冒頭にも記載したとおり、私にとって今回の出張は「初海外出張」「初国際会議」「初アフリカ大陸・初エジプト」と「人生初」尽くしの10日間でした。新しいことを経験する高揚感とともに、そもそも日本語でも細部まで理解しているとは胸を張っていえない研究業務について、英語で説明することに力不足も感じました。また国内出張でも同様ですが、研究の目指すところや他方との連携、活用なども含め、相手の熱意ある質問にも答えられるようになりたいと強く感じました。もちろん研究者と事務職員は求められる役割も、目標も異なると思いますが、自分の仕事が大小問わず常に研究につながっていることを日ごろから意識して、今回のような機会を自分の次のチャンスと、それ以降の事務職員にも引き継げるよう日々の業務に従事したいと心から思います。

4月に地球システム領域に着任してからもうすぐ1年、今回のような貴重な機会をいただいたことを感謝し、今後も研究の補佐と発信が円滑に進むよう尽力いたします。

最後に、日ごろより地球環境研究センター、衛星観測センターの業務にご理解・ご協力いただいている皆様に、改めて心より御礼申し上げます。今後とも事務職員として適切な業務運営ができるよう努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

写真14 COP27でのお気入りの写真。出張中いたるところにいた猫。食堂にもやってきました。食事はあげられないけれど…。(写真提供:佐伯)
写真14 COP27でのお気入りの写真。出張中いたるところにいた猫。食堂にもやってきました。食事はあげられないけれど…。(写真提供:佐伯)

衛星観測センターWEBサイト:https://www.nies.go.jp/soc/
GOSAT-GWプロジェクトウェブサイト:https://gosat-gw.nies.go.jp/index.html

*政府代表団メンバーからの報告は3月号に掲載いたします。また、国連気候変動枠組条約締約国会議(第1回~第26回)の報告は、地球環境研究センターウェブサイト(https://www.cger.nies.go.jp/cgernews/cop/)にまとめて掲載しています。