FASOM モデル概要 FASOM(Forest and Agricultural Sector Optimization Model)は、アメリカ合衆国における農業及び林業2つの部門の動態を記述する非線形モデルであり、市場原理における農林業活動や競争の時間経過によって変化していく土地利用配分を予測する。このモデルは、森林における炭素固定を政策的に実施した場合の市場に与える影響や収益性等を評価するために開発されており、農林業政策に関する幅広い評価が可能である。 FASOMは、アメリカ合衆国において11の供給地域と、1つの国民需要地域(国全体)を想定しており、アラスカとハワイは含まれない。各地域における土地利用と、部門をまたがる土地利用転換は、経験的要因と実際的要因の双方に従って決定される。例えば、グレートプレーンやオクラホマといった、営利的林業やコスト効率の高い炭素固定が可能な森林を、豊富に持っているわけではないが、農業生産的に重要であるような地域は、モデル内部で農業活動のみに限定されている。 FASOMにおいて生産、消費、価格決定が行われる生産物リストを、森林部門については表m2-1に、農業部門について表m2-2及び表m2-3に示す。市場動向のシミュレーション期間は100年間となっており、10年ごとに評価が行われる。林業及び農業生産物の国民需要曲線は、予測期間である1990~2089年の間について10年ごとのデータをモデルに入力する。また農業生産物、林業生産物、固定炭素の供給曲線は、市場競争の結果としてモデル内で計算され、過去のデータから予測される曲線と比較する。 FASOMは、森林部門モデルと農業部門モデルに大きく分かれており、さらに部門間の経済的活動によって変化する炭素蓄積量を評価するモデル(炭素部門モデル)が含まれる。 森林部門モデルでは、森林(私有林)の利用方法の決定、伐採地域における再植林の決定、森林から農地への土地利用転換の決定等が行われる。森林地域は、地域、樹齢、所有形態、樹種、生産性、管理区分、農業利用への適応度によって区分される(表m2-1参照)。森林のみに限定されている地域は、地質、土壌、気候等の地域特性から農業不適応地と判断された地域である。それ以外の森林地域は、牧草地や農業生産地域としての利用にも適応できるが、コストや生産性といった経済的な理由から森林となっている地域である。 農業部門モデルでは、表m2-2に示す36種類の1次産物と表m2-3に示す39種類の2次産物に関して、各地域における生産物の選択と生産量、及び森林への土地利用転換の決定をシミュレートする。農作物は、各地域における土地、労働力、灌漑用水によって検討が行われ、これらのコスト及びその他インプットデータが、10年毎の各地域における農業生産物種の予算として含まれるようにモデル化されている。また、各地域における農産物の組み合わせの最適解が、非現実的な組み合わせになることを防ぐ措置がとられている。農業地域は、農業生産に限定された地域(地域特性から森林に適さないと判断された農業生産地域)と、森林に転換可能な農業生産地域、そして森林に転換可能な牧草地に区分される。 FASOMでは、これらのシミュレーションの結果、森林に蓄積された炭素量と伐採による炭素蓄積の変化を算出する。森林に蓄積されている炭素は、樹木への蓄積と、森林生態系(土壌、林床堆積物、下草等)への蓄積に大きく分けることができる。樹木については、伐採後、市場に流通する木材と流通しない木材に分けられ、市場流通木材に蓄積された炭素は、木材生産物に蓄積され続ける部分と、燃焼される部分、そして大気中に放出される部分に分けられる。市場流通しない木材については、森林に残留する部分と大気中に放出される部分に分けられる。 (▲このページのTOPへ戻る) 入出力パラメータ (入力パラメータ)
(出力パラメータ)
(▲このページのTOPへ戻る) リンク先 ・ Bruce A. McCarl氏HP (http://agecon2.tamu.edu/people/faculty/mccarl-bruce/) (▲このページのTOPへ戻る) |
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