CDM・吸収源プロジェクトの基礎知識
森林分野の吸収源プロジェクトに関する主要な情報

 IPCC報告書
 OECD
 世界銀行
 Lawrence Berkeley National Laboratory
 SGS
 Global Forest Watch
 Pew Center
 Germany Advisory Council on Global Change
 United States Department of Agriculture


IPCC報告書

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化問題の科学的側面について政府間の検討を行う公式の場として、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立されました。気候変動に関する科学的知見、影響、経済、緩和ないし適応のオプションに関する情報を評価し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)へ科学的/技術的/社会経済的助言を与えることを目的としています。そのため、政策決定者、科学者及びその他の専門家によって広く用いられる評価報告書、特別報告書、テクニカルペーパー、方法論及びリファレンスとして標準的に用いられるようになったその他の成果を公表しています。

 土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF)に関する特別報告書は、UNFCCCの科学上及び技術上の助言に関する補助機関会合(SBSTA)の要求に応じて作成されました。この特別報告書では、地球規模の炭素サイクル、及び異なる土地利用や林業活動が、炭素ストック・温室効果ガスの排出削減にどのような影響を及ぼすかについて検討しています。また、京都議定書と関連して、林業及び土地利用部門においてさまざまな定義シナリオや炭素アカウンティング戦略を採用することによってもたらされる可能性のある、将来の炭素吸収や排出についても検討しています。本報告書の構成は以下のとおりです。

目次 序文
前書き
政策決定者向け要約
1. 地球レベルでの展望
2. 異なる定義の特徴及び一般的な問題
3. 新規植林、再植林及び森林破壊(ARD)
4. 追加的な人間活動-第3条第4項
5. プロジェクトベースの活動
6. 報告ガイドラインに関する京都議定書の特徴

付録
A. 著者、コントリビューター及び専門家レビュアー
B. 頭字語、略語及び単位
C. 主要なIPCC報告書のリスト

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OECD

(1)活動の概要

 気候変動枠組条約は、附属書I国の環境、エネルギー、外務関連省庁の担当者からなる「附属書I国専門家会合(The Annex I Expert Group)」を設置しています。OECDとIEA(International Energy Agency)は、本専門家会合のために気候変動政策の策定及び附属書I国の条約交渉支援に関する活動を行っています。この会合は交渉の場ではなく、政策分析、京都メカニズム推進のためのオプションに関する助言、遵守の保証に関する報告・レビュー、及び条約と京都議定書の進捗に関する評価などの活動を行っています。

(2)森林・土地利用分野における活動の概要

 2000年5月に開催された附属書I国専門家会合において、ベースラインガイドラインのフレームワークに関する検討が行われました。その際、セメント、発電、エネルギー効率向上、鉄鋼、及び林業の5分野に関するケーススタディの検討が行われました。林業関連プロジェクトのベースラインに関する資料の概要は以下のとおりです。

Potential and Implications for Multi-Project Emissions Baselines:
Forestry Status Report はじめに

 このケーススタディは、森林部門における想定されるJI/CDMプロジェクトのための標準化されたベースラインを構築するオプションを検討するものであり、植林/再植林及び森林伐採回避のプロジェクトに焦点を当てている。

 植生及び土壌による地球全体での炭素貯蔵量は約2500Gt Cと算定される。地球規模では、森林破壊による大気中への炭素の純放出量は、1.5-2GtC/year(IPCC 1996)であると考えられている。これは毎年約1700万haの森林が失われていることを示している。

 森林システムは、成長や発達に伴って炭素を吸収し、植生及び土壌に炭素を貯蔵する。成長中の森林の吸収率は、1-8 tC/haと、気候、土壌、種類及び管理の仕方によってかなり異なる。成熟した森林の炭素貯蔵量は、約50-450 tC/haにわたる。森林が開拓される時には、地上の炭素の大半と地下の炭素の一部が失われ、50-250 tC/haが排出される(Malhi et. al. 1999)。

 森林部門は、タイプは異なるが補完的である3つの戦略を通じて、気候変動防止における重要な役割を果たす。

  • 既存の炭素貯蔵及び吸収源の保全及び強化
  • 新規の貯蔵及び吸収源の創出
  • 化石燃料及び非再生可能製品の代替手段の提供

 想定される森林オフセットプロジェクトは、樹種、土地の特徴及び管理の相互作用の影響をうける炭素の流れが双方向(排出と吸収)あるために、(潜在的なエネルギー及び産業のJI/CDMプロジェクトと比較して)多少複雑である。また、社会経済条件の多様性は非常に重要な側面を付け加えている。

 人間社会の影響を受けない森林あるいは潜在的森林はほとんどない。土地利用の変化は、主に人口の変化や土地管理によって起こる(WRI 1997)。さらに、多くの産業プロセスと異なり、林業及びその他の土地利用活動は、様々な社会及び経済条件のもとで幅広い主体によって計画・実施されている(小規模に行う者もいれば、大規模に行う者もいる)。土地は、私的に、公的にあるいはコミュニティによって所有されており、従って、炭素の利益(carbon benefits)の所有権は重要な問題である。また、森林利用の形態及び強度も非常に変動的である。森林には、計画された管理制度下にあるものもあれば、集約的なプランテーションとなっているもの、断続的に耕作に利用されているもの、野生あるいは保護区域とされて人間の介入がほとんどないものもある(Bass et. al. 2000)。

 陸地の炭素貯蔵を管理する手段としての森林プロジェクトの実行可能性と有効性(viability and validity)は、ローカルの生活及び慣習の条件に基づいて検討されなければならない。従って、森林プロジェクトのベースラインの算定は、人々の行動や生態システムの将来予測を含むものである。

 社会経済的及び生態的な条件が多様であるならば、想定される回避オプションが幅広く存在する。植林/再植林のカテゴリーにおけるオプションには、異なるタイプのプランテーションの造成、アグロフォレストリーシステムの幅広い範囲における樹木と作物の混植、天然更新の促進による荒廃した森林の回復が含まれる。森林伐採回避のカテゴリーでは、ミティゲーションオプションには新規保全地区(new reserves)及び保護区域の設定、森林火災のコントロール、特定区域における伐採権の管理あるいは調整が含まれる。

 あらゆる森林活動による気候変動緩和のポテンシャルは、今後50年間で50-90GtCになると算定されている(Cannell, 1995)。しかし、多くのプロジェクトの開発に必要とされるタイムラグを考えるなら、第1約束期間中における実際の排出抑制のポテンシャルは、恐らくもっと少ない(典型的な森林プロジェクトは40-60年の期間にわたって炭素を吸収すると思われる)。

◇ 本レポートは、選定された7つのAIJ森林プロジェクト(3つの植林プロジェクトと4つの森林伐採回避プロジェクト)に適用されたベースライン方法論について検討し(UNFCCC, 1999)、京都議定書にもとづく想定される植林/再植林及び森林保全プロジェクトのためのベースラインを標準化することの可能性について、結論を導き出す。

予備的な結論

 植林/再植林と森林伐採回避(森林保全)は、2つの異なるプロジェクトタイプであり、区別して扱われるべきである。本レポートでは、慣習的な造林システムによる樹木の再創出を再植林とは考えない。これは、土地利用あるいは森林活動の変化を生じないためである。

 現在までに行われている多くの植林あるいは再植林プロジェクトは、ベースラインの定義に比較的簡単な方法を用いている。つまり、ベースラインの設定に先立ち、植生の炭素含有量を用いている。植林に先立って木本種が再成長したり、炭素含有量が変動する場所において、先在している植生が、長い休耕期間を含む管理システムの一部に含まれる場合には、複雑な問題が生じることもある。これらのケースでは、ベースラインとして、農学的なサイクルにおける平均炭素含有量をとることが望ましい。

 森林伐採のプロセスを阻止することを試みているプロジェクトでは、ベースラインシナリオを定めるために幾つかのアプローチを用いている。大半のプロジェクトは、土地所有者の明確にされた意図、広く行われている政策、及び社会の状況といったローカルの情報に基づいた干渉がない場合に、当該土地の特定区域において生じる結果に関して、もっともらしい「ストーリー」を作成することを試みている。現実には生じないプロジェクトがないケースにおけるもっともらしいシナリオの予測は、ベースラインの定義において最も必要とされている側面である。

 いくつかのプロジェクトでは、衛星画像や土地利用マップから土地利用変化の傾向や森林伐採率の推定を試みている。しかし、ある区域の土地利用変化プロセスが空間的及び時間的に変動的であるとするなら、国レベルあるいは地域レベルの森林伐採率の外挿による当該地域のそれの妥当性を確保するには、綿密な検討が必要とされる(Tipper and de Jong, 1998)。

 あらゆる標準化モデルによって「バイオマスにおいて見込まれる変化」を示す際に考慮する必要がある重要な要因は、以下に示すとおりである。

  • 主要な社会的要因(所有権及び所有している土地面積など)
  • 環境的要因(生態系のタイプ及び気候条件など)
  • 事前に把握可能な変化要因(傾斜あるいは道路及び居住地区への近さ)

 これらのモデルを異なる地域で用いるには、キャリブレーション(校正)が必要である(ECCM, 2000)。

次のステップ

 最終レポートは部分的に完成している。植林/再植林及び森林伐採回避プロジェクトのための標準化ベースラインの設定に向け、ケーススタディプロジェクトからの示唆をより詳細に分析する必要がある。現在のドラフトレポートは、CO2以外の温室効果ガスの扱いに関する記述、ベースライン定義のための地域レベルの標準化方法に関する記述、ケーススタディの幾つかについて理解すべきより詳細な記述、分かり易く編集・再構成された一般的な記述を含めるよう拡張される予定である。

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世界銀行

(1)活動の概要

 世界銀行では、以下のような温暖化問題に関する取組を行っています。

  • The World Bank Energy-Environment Strategies
  • The Carbon Backcasting Study
  • World Bank - GEF Climate Change Portfolio
  • Global Overlays for Climate Change
  • Activities Implemented Jointly
  • National Strategy Studies Program
  • Prototype Carbon Fund

 温暖化対策関連プロジェクトに関しては、1997年にEnvironment DeaprtmentがモGuidelines for Climate Change Global Overlaysモを出版しており、世界銀行のプロジェクト実施に際して、プロジェクト担当者が把握しておくべき基本的情報と、エネルギー分野及び林業分野に関するガイドラインが示されています。1998年には、モGreenhouse Gas Assessment Handbook - A Practical Guidance Document for the Assessment of Project-level Greenhouse Gas Emissionsモを出版しました。ここには、世界銀行が実施する温暖化関連プロジェクトにおいて、プロジェクト担当者がGHG削減効果を簡単に試算できるように、簡単なケーススタディとともに、試算のフローと解説が示されています。

(2)森林・土地利用分野における活動の概要

 世界銀行は、さまざまな温暖化対策関連の活動を実施しています。その中から、プロトタイプカーボンファンドについて、以下に概要を示します。

◎プロトタイプカーボンファンド(PCF)の概要

■設立の背景及び目的

 地球温暖化は借入国に大きな影響を及ぼすとの認識のもとに、世界銀行の経営陣は1999年7月20日にPCF設立を承認しました。PCFの目的は以下の3点です。

(1)High Quality Emission Reductions

 PCFではUNFCCCに登録可能なGHGの排出削減を確保できるプロジェクトに資金を提供します。そのため、独立した専門家がベースラインの評価、削減の認証/承認手続きを行います。

(2)Knowledge

 GHG削減のためのビジネスを実施することにより、PCFでは、気候に対する影響の少ない投資やUNFCCCにおける交渉に情報を提供するための、ビジネスプロセスやプラクティスに関する知識ベースを開発しています。

(3)Public-Private Partnetship

 PCFの資金は、官民双方により提供されています。すなわち、PCFは両者の知識や経験が蓄積されることにより、追加的な資金を動かし得ることを示しています。

■参加条件及び主な参加者

 世銀メンバー各国及び、それらの国の企業すべてに門戸が開かれています。参加する政府はUS$1,000万、企業はUS$500万を支払うことになっています。特に、途上国にJIやCDMの市場に対する民間企業の関心を示すためにも、民間セクターの参加が必須となっています。

参加国: カナダ、フィンランド、日本(JBIC)、オランダ、ノルウェー、スウェーデン

参加企業
British Petroleum - Amoco (Oil,UK);
Chubu Electric Power Co.(Electricity, Japan);
Chugoku Electric Power Co.(Electricity,Japan);
Deutsche Bank (Financial,Germany);
Electrabel/Suez-Lyonnaise des Eaux (Energy, France);
Gaz de France (Energy, France)
Kyushu Electric Power Co.(Electricity, Japan)
Mitsubishi Corp.(Trade, Japan)
Mitsui (Trade, Japan)
Norsk Hydro(Oil, Electricity, Norway)
R.W.E.(Electricity,Germany)
Shikoku Power Co.(Electricity, Japan)
Statoil(Oil, Norway)
Tohoku Electric Power Co.(Electricity, Japan)
Tokyo Electric Power Co.(Electricity, Japan)

ホスト国 参加:ラトビア、コスタリカ、メキシコ、ガテマラ、アルゼンチン、エルサルバドル、ブラジル、ニカラグア、トーゴ、セネガル、ジンバブエ、ブルキナファソ、ウガンダ、チェコ、ホンジュラス、コロンビア、モロッコ、

レビュー中:ロシア、スロバキア、インドネシア、スロベニア、ペルー

■PCFの資金規模

 提供された資金総額はUS$8,500万です。上限がUS$15,000とされていて、2000年4月から運用され、2012年に終了の予定となっています。パイロット活動であるため、排出削減市場において競争する意図はありません。

■運用プロセス

 PCFプロジェクトマネジャー及び、京都議定書に沿った排出削減に興味を持つ人を対象として、PCFでは「Operations Handbook」を作成しています。

■特定プロジェクト

 ラトビア廃棄物管理プロジェクト(リエパジャ市及び周辺地域における近代的な廃棄物管理システムの自己管理)

 ウガンダ西ナイル水力発電プロジェクト(地方における電力供給のための水力発電による小規模独立グリッド設置と現存のディーゼル発電の置換)

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Lawrence Berkeley National Laboratory

(1)活動の概要

 米国の国立研究所であるLawrence Berkeley National Laboratory(LBNL)Environmental Energy Technologies Divisionは、米国環境保護庁、エネルギー省の支援を受けて、1999年3月に「気候変動緩和に向けたエネルギープロジェクトのモニタリング・評価・報告・検証及び認証のためのガイドライン」及び「気候変動緩和に向けた林業プロジェクトのモニタリング・評価・報告・検証及び認証のためのガイドライン」を策定しています。

(2)森林・土地利用分野における活動の概要

 LBNLは、多様な林業プロジェクトに対応可能な「気候変動緩和に向けた林業プロジェクトのモニタリング・評価・報告・検証及び認証のためのガイドライン」を作成しています。

 このガイドラインは、特に開発者・評価者・検証者及び認証者を対象として作成されています。この他、林管理会社、開発銀行、金融会社、コンサルタント、政府関係者等、JI、CDMのプロジェクトの設計・発展に従事する者であれば、誰でも利用可能です。

 ガイドラインでは、費用を伴う評価・検証に関する手続き、MERVC*1手続きの適用、ベースライン及びプロジェクトの設置状況を同様のプロジェクトに応用する手続き、及び長期的炭素貯蔵量の変化を国際的に認めさせるような手続きの提供を行っています。

 また、環境的・社会経済的影響を評価するチェックリストも含まれており、プロジェクト評価における環境や社会経済への影響の重要性について示しています。

 ガイドラインの作成にあたっては、モニタリング・評価及び報告はプロジェクト実施主体によって行われ、検証及び認証は外部の第3者によって行われることを想定しています。

 ガイドラインでは、炭素蓄積量の見積、承認、モニタリング・評価、GHG削減の報告、検証、認証について、以下の内容により構成されています。

◎気候変動緩和に向けた林業プロジェクトのモニタリング・評価・報告・検証 及び認証のためのガイドライン

1. はじめに
  1.1. プロジェクトタスクの概観
  1.2. 概念的枠組み
  1.3. MERVCガイドラインの目的
  1.4. 対象者
  1.5. 領域
  1.6. 他のプログラム/文書との協力関係
    1.6.1. 世界銀行モニタリング・評価ガイドライン
    1.6.2. ウィンロック炭素モニタリングガイドライン
    1.6.3. SGS Forestry炭素オフセット検証サービス
    1.6.4. USIJIプロジェクト提案ガイドライン
    1.6.5. 温室効果ガスに関するDOEの自発的報告
    1.6.6. フェース財団
    1.6.7. 森林会議(FSC)の森林管理に関する原則及び基準
    1.6.8. エディンバラ大学暫定ガイドライン及び規格2. 炭素プール及び林業プロジェクト
  2.1. 炭素プール
  2.2. 林業プロジェクト
  2.3. バイオマスエネルギー植林地
  2.4. 炭素プール及び林業プロジェクトに固有な特徴3. プロジェクトの見積り及び承認
  3.1. 炭素貯蔵の総変化量の見積もり
    3.1.1. モニタリング範囲
    3.1.2. プロジェクトリーケージ
    3.1.3. プラスのプロジェクト溢出効果
    3.1.4. 市場の変化
  3.2. ベースラインの見積もり
    3.2.1. フリーライダー
    3.2.2. パフォーマンスベンチマーク4. 炭素貯蔵変化のモニタリング及び評価
  4.1. 方法論的問題
    4.1.1. 測定の不確実性
    4.1.2. モニタリング及び評価の頻度と期間
  4.2. 炭素貯蔵の総変化量の測定
    4.2.1 モニタリング範囲の設定
    4.2.2. モデリング
    4.2.3. リモートセンシング
    4.2.4. フィールド/サイト測量
    4.2.5. サンプリング
    4.2.6. 森林モニタリング技術の応用
    4.2.7. 品質保証ガイドライン
    4.2.8. プロジェクトリーケージ及びプラスのプロジェクト溢出効果
    4.2.9. 市場の変化
  4.3. ベースラインの再見積もり
    4.3.1. フリーライダー
    4.3.2. 比較調査区5. GHG削減の報告
  5.1. 複合的な報告6. GHG削減の検証7. GHG削減の認証8. 環境的及び社会的影響
  8.1. 環境影響
  8.2. 社会経済的影響9. MERVC費用

10. 結論

*1 MERVC:モニタリング・評価・報告・検証及び認証(Monitoring, Evaluation, Reporting, Verification, and Certification)

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SGS

(1)GHG Project Validation & Verificationの概要

 この文書では、SGSのGHGプロジェクト評価及び検証サービスについて解説しています。本サービスは、プロジェクトがSGSのGHGプロジェクト適格性クライテリア(CDMにおける評価に相当)を遵守していることを認証し、その後、GHGクレジット(CDMのCERs及びJIのERUsに相当)の発行をもたらす活動が行われたことを検証するものです。 GHGプロジェクト評価及び検証サービスは、以下に示す手続きにしたがって実施されます。

1. 事前評価

 認証を獲得しやすいプロジェクトにすることが主な目的であり、プロジェクト設計における明らかな欠陥を同定するためにギャップ分析が行われます。通常、現地調査(site visit)が必要とされます。

2. SGSのGHGプロジェクト適格性クライテリアに関する評価、科学的方法に関する評価、リスク評価、及びプロジェクト便益の定量化を網羅するメインアセスメント

 メインアセスメントは次に示す4つの活動から構成されます。

  • プロジェクト設計書及びプロジェクトの実施の評価
  • ベースライン及びプロジェクトがある場合のシナリオを決定するために用いられた科学的方法論の評価
  • プロジェクトのリスク及び不確実性に関する評価
  • 予測されるGHGクレジットの定量化

3. レビューと認証

 メインアセスメントの結果は最終報告書に記載され、この報告書はSGSによって選ばれた専門家パネルによるピアレビューを受けます。主評価者は専門家パネルによるコメントを検討し、場合によっては、更なるCARs(Corrective Action Requests)の請求を含む、必要な行動を起こします。問題への対処後、最終的な内部レビューを経て主評価者の推薦が受理されれば、プロジェクトはプロジェクト設計の認証と予測される排出削減単位のスケジュールを受け取ります。

4. GHGクレジット発行を導くプロジェクト活動の検証

 GHGクレジットが発行される前に、計画された活動の実施が実証されなければなりません。この実証は立入り検査中に適切な方法を用いて行われます。同時に、SGSのGHGプロジェクト適格性クライテリアの遵守についても検証が行われます。

(2)SGS GHG Project Eligibility Criteria

  本文書は、SGSのGHGプロジェクト適格性クライテリアについて解説したものです。必要条件の概要は次のとおりです。

1.受容性(Acceptability)

 輸出(ホスト)国の受容性:プロジェクトは、ホスト国の幅広い公共政策の目標を満たすものでなければならず、特にCDMの場合は持続可能な発展に貢献するものでなければならない。また、ホスト国のCDM/JIの目的(objectives)に合致していることも必要である。

 輸入国及び国際レベルの受容性:CDM/JIに関する国際的な合意、その他の国際的な水準(standards)、規範、法律等を遵守していることが必要であり、国際コミュニティレベルにおいて受け入れられなければならない。

2.追加性

 削減量の追加性:プロジェクト提案者が、プロジェクトシナリオがリファレンス、ベースラインシナリオに対して追加的であることを合理的に証明しない限り、排出削減量をERUsやCERsとして請求することはできない。

 プログラムの追加性:プロジェクト活動が既存のあるいは予想されたプログラムやスキームと同様のものである場合、プログラムの追加性は、関連排出削減や吸収の目標・義務が同様のプロジェクトを超過しているかどうかによってのみ実証される。

 資金(マクロレベルの資金)の追加性:国レベルのODA移転、UNFCCCの基における資金メカニズム(即ちGEF)、多国間開発銀行及び開発機関のプログラム等の開発基金を、CDMに流用してはならない。しかし、キャパシティビルディング、トレーニング、あるいはフィージビリティ調査といったプロジェクトの実施に関係のない活動に対しては、開発基金を受けることができる可能性がある。

 投資(ミクロレベルの資金)の追加性:プロジェクトディベロッパーは、プロジェクトのCERs/ERUsの販売を通じて生じる収入の流れによってプロジェクトの実行可能性が拡充されることを示し、投資の追加性を実証しなければならない。

3.外部性

 GHGに関連する外部性:排出リーケージ。これは、活動の移動、アウトソーシング、市場の影響、ライフサイクル排出の変化によってもたらされる。

 GHGに関連しない外部性:開発影響及び環境影響。プロジェクトはプラスの開発影響をもたらす必要があり、CDMの場合には、ホスト国の持続可能な開発に貢献しなければならない。あらゆる社会的及び開発影響を最小化するため、十分に検討し、対策を設定することが必要である。また、プロジェクトはマイナスの環境影響を及ぼす可能性があるため、適切な地域的及び国際的な環境規範に一致していなければならない。必要な場合には環境影響評価も行うべきである。

4.キャパシティ

  • 資金キャパシティ:投入及び算出費用の仮定が受容可能パラメーター外のプロジェクトは、他の仮定や予測に関する更なる調査が必要である。
  • 管理キャパシティ:プロジェクト期間中にプロジェクトを実施及び文書化する管理能力についての証明が必要である。長期間のコミットメントはプロジェクト管理プロセスを支える方針について記述する内部文書に反映されなければならない。
  • インフラストラクチャー・キャパシティ:次に示す分野について、適切に対処しなければならない。
    1. 既存インフラと資本設備の妥当性及びプロジェクトの意図した設計に対する適切さ
    2. 一般インフラへのアクセス
    3. プロジェクトの既存インフラ利用対にする権利
    4. 新規あるいは追加的なインフラに対する必要性が将来の資源の投入に一致する
    5. 制度的インフラ(例えば、情報へのアクセス、国家統計、ホスト国承認メカニズム)
  • 術キャパシティ:プロジェクトは、モニタリング、データ収集及びデータベース管理について、設計・実行する能力を有していなければならない。
  • デモンストレーション:プロジェクトは、既存の方法論、標準的なモニタリングとアカウンティングを用いて排出削減便益を測定して方法を開発しなければならず、全ての計算と測定は特定の標準誤差内におさまらなければならない。また、プロジェクトに伴うリスクがある場合、当該組織はそのリスクを回避するために適した手続き及び管理システムを有していることを証明しなければならない。プロジェクトは外部団体及び関係機関によるレビューに対して公開されていなければならない。

(3)Carbon offset verification of forest ecosystemsの概要 (地球観測LINK計画の出資によるプロジェクト)

1.プロジェクトの地球レベルのImplicationsと根拠

 国連気候変動枠組条約及び京都議定書を受けて、さまざまな炭素オフセットプログラムが開始され、温室効果ガス規制団体はこれらのプログラムの活動を監視しています。SGSでは、EcoSecurities Ltd.と共同で開発した炭素オフセットあるいは排出削減のプロジェクトの分析・検証サービスを提供しています。炭素オフセット検証サービスは、プロジェクトコンセプトと設計の分析、リスク及び不確実性の分析、予測及び達成される排出削減の定量化と認証によって構成されています。このサービスの利用者は、炭素オフセットの売り手、買い手、及び関連のあるGHG規制団体や関心を持つ参加者です。

2.森林生態系における炭素貯蔵の分析

 排出を定量化することは可能ですが、ランドスケープレベルでの生物的炭素プールの空間見積もりには大きな不確実性が存在します。林業プロジェクトの炭素影響を定量化するためには、プロジェクトの影響を受ける全ての関連炭素プールついて、プロジェクト期間中の各プールの変化率(炭素フロー)を分析することが必要です。SGSが現在用いている方法論は、拡張的かつ永久的なサンプリングプロット、現地測定及びForestry Commission等が発行した資料に基づいています。プロジェクト開発の検証及び達成したオフセットや排出削減の認証のための定期調査プログラムには、現地調査及びモニタリングによる炭素吸収量の定期的な検証が必要ですが、これは非常に労働集約的で時間がかかるものです。

3.リモートセンシング技術の活用

 リモートセンシングは、森林生態系の地上バイオマスの算定のための効果的な非破壊型アプローチを提供します。リモートセンシングデータの活用により、植生の生物物理的及び生物化学的変動予測技術を、SGSとEcoSecurities Ltd.が作成した炭素オフセットフレームワークと組み合わせることができます。

4.研究エリア

 温帯プランテーションとして良く知られているThetford森林が研究サイトの1つとして選ばれています。

5.今後の研究

 このプロジェクトの主な課題は、現地から地域規模における森林生態系の炭素プール及びフラックスを見積もるためのリモートセンシングについて理解を深めることです。本研究の次のステップとしては、AIRSAR(1991)キャンペーンから導き出される後方散乱値と比較することによって、時間の経過に伴うThetfordサイトのさまざまな樹種のバイオマス密度の変化に対する空中SARの感度を評価することが求められます。

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Global Forest Watch

(1)活動の概要

 Global Forest Watchは、世界の森林に関する正確な情報を提供するために、デジタル技術と現地の知識を結合した国際的なデータ及び地図作成のネットワークです。

(2)森林・土地利用分野における活動の概要

(a)Global Forest Watchの目的

 Global Forest Watchでは、政府や産業経営者が森林を管理・保護するため実際に彼らの有する責務を実行すれば(国内的にも国際的にも)森林破壊の速度がかなり緩められると考えられています。
Global Forest Watchの総合的な目的は、どのような方法で誰のために森林を管理するかを決定する政策立案過程に対して、透明性と説明責任を浸透させることです。

 Global Forest Watchは、以下の事項によって透明性と説明責任を促進することとしています。

  • 開発事業を行う主体(法人、政府機関、個人)を調べ、
  • これらの主体が事業を実施している場所を精密に地図化し、
  • これらの主体が、どの程度国レベルや地域レベルの運用法及び規制に従っているかをモニタリングする。

(b)Global Forest Watchの参加者

 カメルーン、カナダ、チリ、インドネシア、ロシア、ベネズエラ各国の機関が協力しています。


Pew Center

(1)活動の概要

 ピュー気候変動センター(Pew Center on Global Climate Change)は、Pewチャリティートラストによって1998年に設立された、非営利かつ非党派的な独立組織であり、地球規模の気候変動に対処するため、信頼できる情報、回答、及び革新的な解決法の提供を行っています。32の企業がPew Centerと協力して、気候変動のリスク、課題及び解決法に関する市民への教育を行っています。
  ピューセンターは、気候変化の原因と影響について市民及び政策決定者を教育すること、国内及び国際的なコミュニティーによる温室効果ガスの排出削減を奨励することを目的としています。そのために、以下の活動を行っています。

  1. 環境影響、経済、及び政策課題に関する報告書の公表
  2. 広告、講演会、会議などを通じた市民教育
  3. 国家横断的な政策及び産業界と政府の対話の調整を通じた気候変動に関する国際交渉の促進

(2)森林・土地利用分野における活動の概要

ピューセンターによる当該分野に関する報告書の概要
Land Use & Global climate change: Forests, Land Management, and the Kyoto Protocol

 本報告書は、LULUCF活動が気候システムに対して、化石燃料燃焼からの排出削減と同等の長期的な便益をもたらすかどうかに関する研究、LULUCF問題に関する国際交渉の過程の概説、LULUCF問題に関する交渉による合意の検討、及び京都議定書の曖昧な点・未解決の問題・議定書が有効な国際的ツールとして機能する前に決定しておくべき(未決定の)事項に関する検討、を行っています。土地ベースの気候変化緩和対策を立案する際の重要課題としては以下のものが挙げられています。

  • 炭素吸収の永続性
  • リーケージ
  • LULUCF活動のポテンシャルが大気中の二酸化炭素を実際に削減するほど十分に大きいかどうか
  • 分析テクニックによって陸域生態系において獲得、あるいは保全(もしくは損失)された炭素を正確に測定できるかどうか
目次
前書き
I. イントロダクション
II. 陸域生物圏の管理による気候変化の緩和
  A. 陸域炭素の管理のためのオプション:回避、吸収、化石燃料の代替
  B. LULUCF活動とエネルギー部門の活動との違い
III. 京都議定書の発展
  A. UNFCCCとベルリン・マンデート
  B. 京都議定書への「吸収源」交渉の主要局面
  C. 京都議定書によるLULUCFの取り入れ方
IV. 国レベルの土地利用変化及び林業に関する重要な問題
  A. 人為的な活動
  B. 森林とは何か?再植林とは何か?
  C. 不確実性と実証可能性の取扱い
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Germany Advisory Council on Global Change

(1)活動の概要
  Germany Advisory Council on Global Change (WBGU)は、1992年にドイツ連邦政府によって設立された独立組織であり、教育研究省、環境自然保護及びReactor Safety省によって運営が支援されています。WBGUの目的は、科学的な分析に基づき、気候変動に関する政策提言を行うことであり、2年ごとに(2001年以前は毎年)政府に対して、環境と開発の分野における地球規模の問題を克服するための研究と行動に関する提言を含む報告書を提出することになっています。

(2)森林・土地利用分野における活動の概要
  1998年、WBGUは「The Accounting of Biological Sinks and Sources Under the Kyoto Protocol -- A Step Forwards or Backwards for Global Environmental Protection?」という特別報告書を作成しました。この特別報告書では、生物排出源及び吸収源のアカウンティングの観点から京都議定書の評価が行われています。本報告書では、まず、土地利用変化、農業及び林業における人間起源の活動のネット・アカウンティングに関する京都議定書の条項について分析しています。次に、陸域生態系の排出及び吸収ポテンシャルと不確実性及び未解決の問題に関する知識を整理し、これに基づいて京都議定書の条項に関する評価が行われます。評価の結果、これらの条項の解釈及び適用と今後の交渉に関する提言がなされています。

目次

1. 要約
2. イントロダクション
3. 京都議定書の分析
  3.1 計算手続き
  3.2 植林、再植林及び伐採のアカウンティング(第3条3項)
  3.3 追加的な活動のアカウンティング?(第7条及び5条)
  3.4 先進工業諸国における対策の柔軟な実施(第6条及び17条)
  3.5 開発途上国における対策(第12条)
4. 陸域生態系の炭素排出及び吸収ポテンシャル
  4.1 生物圏及び土壌圏(pedosphere)における炭素ストック
  4.2 植生タイプの比較
5. 炭素フラックス
  5.1 純生物相生産(biome productivity)の概念
  5.2 純一次生産(NPP)、純生態系生産(NEP)及び純生物相生産(NBP)
  5.3 地球規模の炭素収支の見積もり
6. 吸収源と排出源に対する人間の干渉
  6.1 土地利用変化と林業活動
  6.2 間接的な人為影響
7. 評価
  7.1 生物吸収源のアカウンティングに伴うリスクと問題
  7.2 京都議定書における問題のアカウンティング
  7.3 アカウント可能な活動の選定と定義
8. 提言
  8.1 生物排出源と吸収源に関するIPCC特別報告書
  8.2 先進工業諸国における植林、再植林及び伐採のアカウンティング
  8.3 先進工業諸国における対策の「共同実施」
  8.4 開発途上国における対策
  8.5 国際環境協定機関の協力
9. 用語解説
10. 付録1:表
11. 付録2:京都議定書
12. 参考文献
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United States Department of Agriculture

(1)活動の概要
  United States Department of Agriculture(USDA)において気候変動に関する取組を行っているのはGlobal Change Program Office(GCPO)であり、ホームページ上に情報が公開されています。
http://www.usda.gov/agency/oce/gcpo/index.htm

  GCPOはthe Office of the Chief Economistの中に存在しており、農業、農村及び林業に関連のある気候変動プログラムとUSDAが直面する政策課題に関して省内のコーディネータの役割を果たしています。USDAの気候変動の影響に関する客観的かつ分析的な評価や防止戦略を支え、気候変動の学際的な側面を扱うcoordinated研究計画を行っています。

(2)森林・土地利用分野における活動の概要
  1999年3月、GCPOは米国が京都議定書を遵守することによってもたらされる米国農業の潜在的な費用と便益についてとりまとめた報告書「Economic Analysis of U.S. Agriculture and the Kyoto Protocol」を作成しました。以下にその構成を示します。

  本報告書では、京都議定書の柔軟かつ市場ベースのメカニズムが適切な条件で運用されれば、米国の農家への影響はあまり大きくないと結論づけています。さらに、農家の収入に与えるより深刻な影響を証明することを目的とするさまざな研究は、生産コストの変化に対する農家による調整を適切に考慮できていないために不備がある、とも述べています。

目次
要約
イントロダクション
第1章 気候変動と農業
  気候変動が米国の農業へ与える影響
  温室効果ガスに対する農業の貢献
第2章 気候変動政策と米国の農業:経済影響
第3章 米国の農業に関連した京都議定書についての経済分析
第4章 農業の機会

図表
参考文献
付録1 代替的な許可価格のもとでの影響
付録2 農業におけるエネルギー利用
付録3 USMP地域農業モデル

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