2011年8月号 [Vol.22 No.5] 通巻第249号 201108_249002

地球環境豆知識 18 測定・報告・検証(MRV)

  • 地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス 高度技能専門員 畠中エルザ
  • 地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス 高度技能専門員 伊藤洋

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2007年にインドネシア・バリにおいて開催された気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)で採択されたバリ行動計画において、(1) 先進国による測定・報告・検証可能(Measurable, Reportable, Verifiable: MRV)で各国に適合する緩和(排出削減)の約束または行動、(2) 途上国による測定・報告・検証可能な方法で行われる適切な緩和行動(Nationally Appropriate Mitigation Actions: NAMAs)、を含む気候変動の緩和に関する国内または国際的行動の強化について、デンマーク・コペンハーゲンのCOP15に向けて話し合うことが決定されていた。これは、温室効果ガスの排出削減義務を課せられていない途上国も含めて、削減の約束または行動を検討することが決定されたという意味において重要な一歩であった。

こうしてその後2年にわたり議論が重ねられ、2009年、国別報告書(National Communications: NCs)や隔年報告書(Biennial (Update) Reports: B(U)Rs)における測定・報告、またそれらを検証する国際評価・レビュー(International Assessment and Review: IAR)や国際協議・分析(International Consultations and Analysis: ICA)といった形で、MRVの概念がコペンハーゲン合意の中で具体化された。国別報告書や隔年報告書は、各国の温室効果ガスの排出・吸収量や政策・支援の進捗状況に関する情報を含み、世界全体での排出削減に向けた政策の議論をするに際し欠くことのできない媒体であり、その品質を担保するために、先進国は国際評価・レビュー、途上国は国際協議・分析を求められることになる。

なお、コペンハーゲン合意そのものはCOPの正式な合意の形で結実せず、COPにより「留意(take note)」されたという取り扱いであったため、このトピックの議論の場となっていたAWG-LCAの作業期限がCOP15からメキシコのCOP16へと延長されたことに伴い、COP16のカンクン合意において初めて正式にMRVの具体像が位置づけられることになった。しかし、上述した国別報告書、隔年報告書、国際評価・レビュー、国際協議・分析等はそのガイドライン等の詳細が固まっておらず、気候変動枠組条約の下での交渉の進捗を引き続き注視していく必要がある。

なお、バリ行動計画の元の文言は、「測定・報告・検証可能な」という形容詞の形になっているが、現在は緩和行動のMRV(測定・報告・検証)、といった形で使用されることも多い。

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